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夏の華 〜 暁の星と月 Ⅱ 〜
第9章 さよなら、初恋
泉の切れ長の美しい眼差しが薫を捉える。
苦しげな…しかし真っ直ぐな眼差しだ。
「…はい。薫様」
「僕より、好きなの⁉︎」
「…いいえ」
「⁉︎」
「…私は薫様が一番好きです。薫様が一番大切です」
「じゃあどうして⁉︎」
「だからです。薫様が一番大切だから、貴方の身体を奪うことは出来ません」
毅然とした言葉に、薫ははっと息を飲む。
「私は貴方が可愛くて仕方ありません。貴方は私の子どものような存在です。…だから、私は子どもを抱くことは出来ないのです」
「…そんな…!…キスしてくれたのに…?それ以上のことだって…」
泉の端正な貌が苦しげに歪む。
「…あれは…してはならないことでした…。
貴方が余りに美しく可愛らしくて…我慢が出来ませんでした」
…けれど…と、きっぱりとした迷いのない口調で続ける。
「…その後の一線はどんなことがあっても越えてはならないと心に命じておりました」
薫は泉にしがみつく。
「どうして⁉︎僕は泉が大好きなんだよ。愛しているんだ!お前になら何をされてもいい!僕はお前の子どもなんかじゃない!」
その腕をそっと 引き離し、貌を見つめる。
…その貌に、更に幼い頃の薫の面影を重ねる。
泉は目を細め、優しく囁く。
「…私が薫様に初めてお会いしたのは、貴方がお生まれになってすぐのことでした。
旦那様に雇っていただき、生まれたばかりの薫様と対面しました。…貴方は本当に息を呑むほどに可愛らしかった…。
…私はこの方を生涯大切にお守りしようと心に決めたのです。
薫様は私にとても懐いて下さって…他の者が抱いても泣き止まないのに、私が抱くとぴたりと泣き止まれたのです。…それからも薫様のご成長は私の生き甲斐でした。
…そんな薫様を…私は抱くことは出来ません。貴方は私の可愛い我が子なのです」

薫の大きな瞳に透明な涙が溢れる。
「…泉…」
白い頬に流れ落ちる涙を優しく拭う。
「…可愛い我が子の薫様が誰よりもお幸せになられること…それが私の一番の願いです。
…どうか、貴方を身も心も愛して下さる貴方に相応しい素晴らしい方に巡り会えますように…」

…そして…
「…薫様のことはこれからもずっと、私が命に代えてもお守りいたします。それだけはお忘れにならないでください」
瞬きもせずに見上げる薫の美しい額に、忠誠心に厚い騎士のようなくちづけを、泉はそっと与えたのだった。
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