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夏の華 〜 暁の星と月 Ⅱ 〜
第9章 さよなら、初恋
縣家の温室はいつ足を運んでも見事だ。
真冬とは思えない色鮮やかな色彩に満ちた芳香の豊かな花々が咲き乱れている。
司はふとイブの夜にこの温室で泉とワルツを踊ったことを思い出した。
…泉の腕は逞しく温かく、冷えきった司の身も心も温め、癒してくれた。
そして交わした密やかなキス…。
思わずうっとりと思い出していると、奥の一枚硝子の扉の前に、こちらを険しい眼で見据えている薫の姿に気がついた。

司は軽く咳払いをしながら、薫の前に進み出た。
…改めてこの家の小さな御曹司、縣薫を見つめる。
13歳にしてはやや小柄だが、頭が小さく手足がすらりと長いのでバランスが取れたスタイルをしている。
その貌は父親 礼也の男らしい端正なそれとは余り似ておらず、かと言って母親の光の華やかな美貌ともまた違う貌立ちである。
…ああ、暁さんに良く似ているのだ。
司は合点がいった。
先ほどまで一緒にいた嫋やかな麗人、暁を思い返した。
人形のように整った目鼻立ち、優美な雰囲気…。
親子というよりは兄弟のように見える二人だ。
…もっとも薫には暁のようなどこかひんやりとした淫靡な儚さはないけれど…。

司は年長らしく、穏やかで丁寧な口調で語り始める。
「…薫くん。…改めて君にお詫びしなくてはならない…。…僕が泉と…その…愛しあっているところを…」

…その言葉を聞き、ふっと薫が冷笑を浮かべた。
「…司さん。貴方なにか勘違いされてませんか?」
「…え?」
思わぬ薫の態度に戸惑う司の貌を、瞬きもせずに見つめる。
「泉とセックスをしたからって、もしかして泉と恋人同士になったと思っていらっしゃるのですか?」
「…薫くん…」
「セックスしたくらいで恋人になれるなら、僕はとっくに泉の恋人ですよ。勘違いしないで下さい」
冷たく吐き捨てるような薫の言葉に、司は大きな薄茶色の瞳を見開いた。
「…い、今…なんて…」
司の反応に満足するように、薫は形の良い唇に微笑みを浮かべた。
「…僕は泉とセックスしました。貴方がいらっしゃるずっと前からです。ご存知なかったんですか?」
司の白い貌がすうっと青ざめてゆく様子を、薫は表情も変えずに見つめ返す。


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