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夏の華 〜 暁の星と月 Ⅱ 〜
第9章 さよなら、初恋
泉はメイドにお茶の指示を終え、階下から階上へと続く階段を上がる。
暁が年始挨拶に訪れているので、アフタヌーンティー用のサンドイッチ、プチケーキ、スコーンといつもより種類を多く取り揃えたのだ。
…もう司様もご参加できるだろうし…。
お風邪もすっかり良くなられて良かった…。
泉はほっとする。

大客間に通じる回廊を通りかかった時、奥の温室の入り口から足早にこちらに向かってくる司の姿が見えた。
箱根から礼也達が帰宅しその荷解きや、薫を大紋家に迎えに行ったりなど慌ただしく過ごしていたので、今日はまだ司とろくに貌を合わせてもいなかったのだ。
遠目でその美しい姿を見るだけで、胸が高鳴る。

泉は眼を細め、司の前まで歩み寄り声をかけた。
「司様。…温室にいらしていたのですか?」
司はその声にはっと貌を上げ、見る見る内に貌を強張らせた。
「…泉…」
硬い表情の司に眉を顰める。
「どうなさいました?…またお熱が出ましたか?」
その白い額に触れようとした泉の手を咄嗟に払い退ける。
「…触るな!」
鋭い物言いに泉ははっとする。
「どうされましたか?…何かお気に召さないことでもありましたか?」
それには答えず足早に泉の前を通り過ぎる。
「司様!」
泉の声を無視して玄関ホールを横切り、二階へと続く大階段を駆け上がる。

その腕を背後から捕まれ、司はびくりと身体を震わせる。
「司様!どうされたのですか?」
「…離せ」
振り解こうとした腕を更に強く捕まれ、耳元で低く囁かれる。
「…どうしたんだ?司…。俺が何かしたなら言ってくれ」
素の泉の言葉に司は唇を噛み締め、男を振り返る。
端正で精悍な貌を睨みつける。
「自分の胸に聞いてみたら?」
そう言い捨てると泉の腕を振りほどき、一気に大階段を駆け上がった。

慌ててその後を追う。
他の使用人の手前、大きな声は出せない。
「司様。理由をお話し下さい」
司は無言のまま自室に駆け込むと、扉の鍵を内側から閉めてしまった。

「…ちょっ…司様!」
泉は扉の前で呆然と立ち尽くした。
気を取り直して、制服の隠しにある鍵束を取り出す。
「…ど、どれだ?司様のお部屋の鍵は…」
三十近くある部屋の鍵の中から必死で司の部屋の鍵を探す。
「…あった!」
漸く見つけた部屋の鍵を握りしめ、声を掛けながら鍵穴に差し込んだ。
「司様、開けますよ」
…一体、何を怒っているんだ?



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