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夏の華 〜 暁の星と月 Ⅱ 〜
第2章 初戀のひと
光の広い寝台の隣に置かれたアンティークの高価な揺籠の中に赤ん坊は寝かされていた。
暁はそっと覗き込む。

白いベビードレスを着せられた新生児は眼を閉じ、すやすやと眠っている。
「…暁さん、抱いてあげて…」
寝台で上半身を起こし、光は嬉しそうに笑っている。
長い黒髪を緩くひとつの三つ編みに編み、右肩に垂らして、白いネグリジェを着ているのが、いかにも若い母親らしく、とても美しい。

乳母が揺籃から赤ん坊を抱き上げ、暁にそっと差し出す。
暁はこわごわと、しかし、しっかりと白いおくるみに包まれた赤ん坊を抱いた。
「…可愛い…!」
その貌を見て、またふわりと軽い体重を感じて、暁は感激したように小さく叫んだ。

光の枕元に寄り添う礼也が、そんな暁を温かく見る。
「…すごく…可愛いです…!…赤ちゃんて…こんなに可愛いんですね…」
感極まったように伝える暁に、光がそっと答える。
「…暁さんのお陰よ。貴方があの時、私を庇って下さらなかったら…この子は無事に産まれてこなかったかも知れない…。本当にありがとう…」
はっと暁が貌を上げる。
光の美しい瞳に光るものがあった。
「…義姉さん…」
…あの日…。
本当は自分は邪悪な心に囚われて、光の背を押そうとした…。
けれど、それを思い止まったのは月城の笑顔だった。

…良かった…。
闇に囚われないで、良かった…。
…この子が無事に産まれてきてくれて、良かった…。
良かった…!

暁は潤む瞳で、すやすやと眠る赤ん坊を見つめた。
「…無事に産まれて来てくれて、ありがとう…」
…ありがとう…。
そう繰り返す暁を、光と礼也は寄り添いながら優しく見つめていた。

暁は涙を拭いながら、二人に尋ねる。
「…お名前は…もう決められたのですか?」
礼也が近づき、暁の手から赤ん坊を大事そうに受け取り、抱く。
「ああ。薫と名づけることにしたよ」
礼也はその指で赤ん坊の頬を愛しげに撫でながら目を細める。
「…薫り高く気高く、周りの人たちに癒しを与えられるような…そんな人間に育っていって貰いたくてね…」
暁は静かに微笑んだ。
「…薫くん…。素敵な…良い名前ですね…」
礼也は暁を見つめて頷いた。
「ありがとう。暁、お前の甥だ。…よろしく頼むよ…」
…甥…。
…僕の血を分けた甥…。
薫への愛しさがじわじわとこみ上げる。
…僕の血を分けた肉親が、産まれたんだ…。


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