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夏の華 〜 暁の星と月 Ⅱ 〜
第9章 さよなら、初恋
薫の涙に濡れた頬を優しく白いハンカチで拭ってやる。
「…叔父様は…どうやってその恋を忘れたの?」
「…暗闇に閉ざされた僕の目の前に…明かりを灯してくれた人に出会えたからさ…」
眼を細めてそっと囁く暁はまるで月に照らされて密やかに…しかし輝かしく咲く蓮の花のように美しく、薫は思わず見惚れる。
「それって…月城…?」
暁は微笑む。
「…そうだよ。…月城は、僕の凍えた心と身体を丸ごと温めてくれた。
辛い恋の想い出ごとね…。忘れなくてもいい…その恋も、僕の大切な歴史だから…と、彼は言ってくれたんだ」
…あの氷のように冷ややかな美貌の執事が…そんなに情熱的なことを言ったのか…。
薫は驚いた。
そして改めて暁と月城の愛と信頼の深さを思い知らされた。
…だから二人の寄り添う姿はとても美しいのだ…とも。
暁は薫の頭を優しく撫でながら、慰撫を与えるように告げる。
「薫にもきっとそんな人が現れる。…君のことを誰よりも愛して、誰よりも大切にしてくれる人が…。
君はこんなに綺麗で魅力的なんだから…」
薫の脳裏に暁人の面影が鮮明に浮かんだ。
…愛しているよ、薫…。
お前が誰よりも好きだ…。
「…そうかな…」
「そうに決まっているさ。…薫は泉の秘蔵っ子だからね」
そうして薫を一度強く抱きしめると、その瞳をじっと見つめた。
「…でもその前に、君がしたことを謝らなくてはね。まずは泉…。それから司くんに…。二人の誤解を解けるのは、薫だけなんだよ。
…愛する人をいつまでも悲しませたくはないだろう?」
薫は暁の美しい双眸を見つめ返すと、しっかりと頷いた。
…そして
「…泉に本当のことを話して謝る…それから司さんにも…ちゃんと謝る。
…だから…」
再びしゃくりあげながら、暁の胸に貌を埋めた。
「…せ、泉が辞めさせられたりしないよね…?」
暁はふっと優しく笑い、その震える小さな背中を抱きしめた。
「…僕が力になるよ…。兄さんの方は任せてくれ」
その言葉を聞いて、薫は再び声を放って泣いた。
「…あ、暁叔父様…あ、ありがとう…」
箍が外れたように泣き続ける薫を、暁は愛おしげに抱きしめるのだった。
「…叔父様は…どうやってその恋を忘れたの?」
「…暗闇に閉ざされた僕の目の前に…明かりを灯してくれた人に出会えたからさ…」
眼を細めてそっと囁く暁はまるで月に照らされて密やかに…しかし輝かしく咲く蓮の花のように美しく、薫は思わず見惚れる。
「それって…月城…?」
暁は微笑む。
「…そうだよ。…月城は、僕の凍えた心と身体を丸ごと温めてくれた。
辛い恋の想い出ごとね…。忘れなくてもいい…その恋も、僕の大切な歴史だから…と、彼は言ってくれたんだ」
…あの氷のように冷ややかな美貌の執事が…そんなに情熱的なことを言ったのか…。
薫は驚いた。
そして改めて暁と月城の愛と信頼の深さを思い知らされた。
…だから二人の寄り添う姿はとても美しいのだ…とも。
暁は薫の頭を優しく撫でながら、慰撫を与えるように告げる。
「薫にもきっとそんな人が現れる。…君のことを誰よりも愛して、誰よりも大切にしてくれる人が…。
君はこんなに綺麗で魅力的なんだから…」
薫の脳裏に暁人の面影が鮮明に浮かんだ。
…愛しているよ、薫…。
お前が誰よりも好きだ…。
「…そうかな…」
「そうに決まっているさ。…薫は泉の秘蔵っ子だからね」
そうして薫を一度強く抱きしめると、その瞳をじっと見つめた。
「…でもその前に、君がしたことを謝らなくてはね。まずは泉…。それから司くんに…。二人の誤解を解けるのは、薫だけなんだよ。
…愛する人をいつまでも悲しませたくはないだろう?」
薫は暁の美しい双眸を見つめ返すと、しっかりと頷いた。
…そして
「…泉に本当のことを話して謝る…それから司さんにも…ちゃんと謝る。
…だから…」
再びしゃくりあげながら、暁の胸に貌を埋めた。
「…せ、泉が辞めさせられたりしないよね…?」
暁はふっと優しく笑い、その震える小さな背中を抱きしめた。
「…僕が力になるよ…。兄さんの方は任せてくれ」
その言葉を聞いて、薫は再び声を放って泣いた。
「…あ、暁叔父様…あ、ありがとう…」
箍が外れたように泣き続ける薫を、暁は愛おしげに抱きしめるのだった。