この作品は18歳未満閲覧禁止です

  • テキストサイズ
夏の華 〜 暁の星と月 Ⅱ 〜
第9章 さよなら、初恋
その日の深夜遅く泉は執務室の机の前に座ると、大きな溜息を吐きながら、ネクタイを緩めた。
…今日の業務はなんとか滞りなく済ますことができた…。

晩餐の席で暁がさらりと
「司くんは午後に高輪の風間家に行かれました。
暫くそちらにご滞在されるようです。
兄さんと義姉さんによろしくお伝えくださいとのことでした」
説明したのを聞き、オードブルをサーブするカトラリーの音を少し立ててしまった。

暁は泉の方をさりげなく見ると、優しく眼差しだけで頷いた。
…恐らくは慌ただしく出て行った司を見て何かを察し、風間家に連絡を入れてくれたのだろう。
司とも話したのかも知れない。
執事の身では主人の許可もなしに自分から風間家に連絡を入れることなど許されないので、暁の思い遣りに感謝した。
その思いを込めて、丁寧に目礼をする。

暁の言葉を聴いて、雲丹と蟹の前菜を皿に取り分けながら礼也が、好意的な返答をする。
「…風間ご夫妻…司くんのお祖父様達は司くんを眼の中に入れても痛くないほどに可愛がっておられたようだからね。
忍くんが百合子さんと司くんを連れてフランスに渡られてからも、司くんの成長姿の便りが唯一の楽しみだったそうだ。
正月休みに泊まりに行かれたら、それこそ喜ばれるだろうな」
光も頷いた。
「司さんはあの通り本当に綺麗な方だから、自慢のお孫さんでしょうね。語学もご堪能で馬術やダンスもお上手だし…。
風間ご夫妻は司さんが日本にいらっしゃる間にこちらの社交界でお披露目されたいと仰っていたそうよ。
神谷町の父がこの間言っていたわ。
…どうやら司さんの縁談話もたくさんおありらしくて…。風間ご夫妻としては司さんにホテル・カザマを継いで欲しいと思っていらっしゃるらしいのよ。
忍さんはもうパリからご帰国になる気はないようだから…て。司さんに日本でお嫁様を貰ってご結婚して欲しいと仰っていたそうよ」

「…え?」
思わず声を上げた泉を、暁がさり気なく庇うように口を開く。
「…けれど司くんはまた18歳ですし…。ご結婚はご本人の意思が何より大切です。…風間先輩も恐らくそう仰るかと…」

光は頷いて微笑む。
「ええ。そうだわ。…結婚は相思相愛でなくては…。私と礼也さんのように…ねえ?」
「…もちろんだ、光さん」
二人はまるで熱愛中の恋人同士のような眼差しを交わし合った。
暁は泉をそっと見上げ、黙って頷いた。

/954ページ
無料で読める大人のケータイ官能小説とは?
無料で読める大人のケータイ官能小説は、ケータイやスマホ・パソコンから無料で気軽に読むことができるネット小説サイトです。
自分で書いた官能小説や体験談を簡単に公開、連載することができます。しおり機能やメッセージ機能など便利な機能も充実!
お気に入りの作品や作者を探して楽しんだり、自分が小説を公開してたくさんの人に読んでもらおう!

ケータイからアクセスしたい人は下のQRコードをスキャンしてね!!

スマートフォン対応!QRコード


公式Twitterあります

当サイトの公式Twitterもあります!
フォローよろしくお願いします。
>コチラから



TOPTOPへ