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夏の華 〜 暁の星と月 Ⅱ 〜
第9章 さよなら、初恋
…司様のご縁談か…。
ワイシャツの襟を緩めながら、泉は再び溜息を吐く。
…いずれそんな話は当たり前のように上がるのだ。
なんと言っても司様は富裕な風間家の孫で…祖父母は経営している名門ホテルと家の跡目を継がせたいのだから…。
自分に言い聞かせて目を閉じる。

…司は…最初から私とは住む世界が違う人間なのだ…。
今まで考えないようにしていた事実をまざまざと突きつけられ、泉の心は深々と冷えてゆくのを感じる。

クリスマスイブ、そして元日と司の健気さやその美しさ、輝くようなきらきらと煌めく魅力にぐいぐいと惹き寄せられ…我を忘れて彼を抱いた。
…彼をとても愛おしいと思う。
彼をもっと知りたいと思う。
彼の一番側にいる人間になりたいと思う。


…だが…。
泉は考える。
…それが司にとって幸せなことなのかは…正直自信がない。

司はまだとても若い。
性体験もかつての恋人と泉と二人だけだ。
同性愛者と決めつけるのは、早すぎるかも知れない。
加えて執事の自分と深い関係になり、恋人同士になったところで…司に要らぬ苦労をさせてしまうだけではないのか?

…ふと、晩餐の時にさり気なく泉を励ましてくれた暁を思い出す。

…暁様は兄貴と恋仲になった当初、やはりよく泣いておられた。
万事控えめな暁様が涙を流すくらいだ。
きっと堪えきれぬ寂しさや葛藤があったに違いない。

…それを、俺は司にも強いるのか…。

泉は首を振り胸ポケットから煙草を取り出し、咥える。
燐寸で火を点け、深く吸い込む。

…司は暁様のように苦労をした幼少期もない。
恵まれた家庭環境で溢れるほどの愛情を注がれ、何不自由なく育ってきた自由闊達な青年だ。

…その彼に様々な苦労を強いるのは、正直忍びない。

司が本当は何に怒り、この屋敷を飛び出したのか分からないが…ここで距離を置き、冷却期間を置くのは司の為になるのかもしれない。

司より一回り以上年上の泉は、大人の分別を持って決断しなくてはならないのだ。
…司の為に…。
ただ、ひたすら、愛おしい司の為に…。

何度吐いたか分からない溜息を吐いた時…夜の静寂の中、小さなノックの音が響いた。









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