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夏の華 〜 暁の星と月 Ⅱ 〜
第9章 さよなら、初恋
嗚咽を漏らしながら詫びる薫を泉はじっと見つめていたが、やがてその頬を流れる涙を指で優しく払った。
「…薫様…」
「ごめんね…泉…。こんなことしちゃって…。
も、もう僕のことなんか嫌いになったよね…」
泉は首を振る。
そして薫の貌を両手で包み込むと、静かに口を開いた。
その瞳には怒りや憤りの表情は微塵もなく、ただひたすらに薫を慰める穏やかな色しか浮かんではいなかった。
「…いいえ、薫様。
…薫様にそのような嘘を吐かせてしまうほど、泉は薫様を傷つけてしまったのですね…。
私の方こそ、薫様にお詫びしなくてはなりません」

薫は新しい涙を流しながら必死に首を振る。
「違う!泉は悪くない!全然悪くない!僕が…僕が嘘を吐いたんだ…」
「薫様…。嘘ばかりではありませんよ」
「…え?…」
大きな瞳に湖面のような涙をたくさん溜めながら、薫は泉を見つめる。
男らしく精悍に整った大好きな泉の貌だ。
顔立ちはとても似ているが、兄の月城のように冴え冴えと冷たく整った美貌ではなく…雄々しいがどこか甘く人好きする美しい貌が薫は大好きだった。
「…薫様が一番好きですよ。嘘ではありません」
「…泉…」

泉の瞳が辛そうに細められる。
そして苦しげにはっきりと告げられる言葉…。
「けれどそれは、恋ではありません。申し訳ありません」
「…ううん…」
嬉しさと寂しさが、一度に押し寄せる。
「…私は司様に恋しています。…申し訳ありません」
泣き笑いしながら薫は首を振る。
「何度も謝らなくていいよ。…泉…」
泉は愛おしい我が子を抱くように、薫の身体を優しく抱き締めた。
「…貴方に期待させるような発言と行動をしたことをお詫びいたします。私が貴方に性の指南をしたことは…やはり許されることではありませんでした。お許し下さい」
「ううん…嬉しかったんだ…すごく…僕がしてってお願いしたんだから、泉は悪くない」
「それでも…断るべきでした」
苦しげな泉の手を、薫は強く握りしめる。
「…もう僕は泉を諦める。…だから…」
薫はしっかりとした声で迷いなく泉に伝える。
「…司さんを、迎えに行って…」
泉の貌に驚きの表情が浮かぶ。
「薫様…」
薫は白い寝巻きの袖でごしごしと涙に濡れた頬を拭うと、懸命な…しかし澄み切った笑顔ではっきりと告げた。
「司さんを迎えに行って。…それから、司さんと幸せになって。…僕の大好きな泉…」




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