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夏の華 〜 暁の星と月 Ⅱ 〜
第9章 さよなら、初恋
…司が好きだ。
愛している。
そう言葉に出すと、急に自分の中の一番大切な場所に彼がぴったりと収まったのを実感した。

「…何を馬鹿な…。青臭い若者のようなことを言っているんだ。お前、自分の立場を分かっているのか?」
月城は苦々しく苛立ったように言い放った。
泉は腕を組むと同じように兄を睨みつける。
「暁様と事実上結婚している兄貴がそんな理解のない言葉を吐くとは思わなかったよ」
兄の溜息が響く。
そして、先ほどとは打って変わって冷静な声が響いてきた。
「…暁様と司様では置かれている立場と状況がまるで違うだろう。
…暁様は…私は暁様がお小さい頃からずっと存じ上げて来たし、縣家のご当主である礼也様もそうだ。
…恋愛関係になった時には暁様はもう成人されていたし、自立もされている大人だった。だから礼也様も結局は私達の仲を認めて下さった。…私の主人、梨央様や綾香様もそうだ。…私達は様々な方々の善意と寛容と理解の上で一緒になることができた」
…だが…と、諭すような低い声で続ける。
「…司様はまだ18歳の学生だ。しかも彼は縣家が司様のご両親からお預かりしている大切な客人だ。
ご両親は日本から遠く離れたパリにおられる。
風間様は縣様に司様を託され、縣様は司様に関して責任を持ってお預かりになっているのだ。
…それなのに…執事のお前が司様と深い仲になるなど…。万が一事が公になったらどうするつもりなのだ?
お前の責任問題だけではない。縣様の責任問題にもなるのだぞ?
風間様が…そして縣様がお前と司様のことを容認なさると思っているのか?」
じっと自分の眼を見つめ返している弟にやはり瞬きもせずに見返したのち、ふっと語気を弱め…宥めるような口調で語りかける。
「…まだ関係も一度だけなのだろう?今ならお互いの傷も浅くで済む。
悪いことは言わない。もう司様に関わるのはやめなさい。…司様はお父上が縁を切られたとはいえ、ホテルカザマの創始者のお孫様だ。何れ事業を継がれるかも知れない。…お前とは立場も世界も違う方なのだ。立場だけではない。男同士の恋愛が如何に困難なことなのか…考えたことがあるか?相手にどんなに辛く寂しい思いをさせるか…考えたことはあるのか?
…お前は何れ苦しい思いをすることになる。私にはそれが痛いほどよく分かる。
…私は…同じ苦労を弟のお前にはさせたくないのだ」
泉は不意に胸を突かれた。

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