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夏の華 〜 暁の星と月 Ⅱ 〜
第9章 さよなら、初恋
「…まさか君にこの屋敷で会えるとは思わなかったな。司くん。久しぶりだね。…だが君は相変わらず綺麗だ。美の神アポロンですら君の前では赤面するだろう」

メイドが飴色の胡桃の木の卓に午後のお茶の用意を終え、膝を折ってお辞儀をして退出すると、青山史郎は朗らかに…そしてロマンチックに司を賛美した。
その艶を多分に含んだ魅惑的な瞳で見つめられ、司はくすぐったそうに笑い返す。
「…青山様こそ相変わらずお上手ですね。全くお変わりない…」

青山史郎はパリのオテル・カザマのスイートルームの常連客であり、ホテルに飾る絵画や彫像などを青山の経営する店から購入している縁から彼とは昔からの付き合いがあった。
名門貴族出身でパリの美術商としても指折りの成功者、加えて西洋人にも劣らぬ堂々とした長身に逞しい体躯と彫りの深い端正で精悍な美貌の持ち主の彼は日本人会やパリの社交界の有名人であり、その気さくで魅力的な人柄から大変な人気があった。
司も父、忍から紹介され、お茶会や夜会、観劇などで親しく交流を持っていた。

…しかし…
「…青山様はゲイだ。…しかもとても口説くのがお上手で手がお早い。…隙を見せないように気をつけなさい」
司を溺愛する忍はそっと言い渡した。
その頃、既に真紀と愛し合っていた司は、
「分かりました。お父様」
と神妙に頷きながらも、青山に興味を持った。

美しいものが好きな青山は司をとても気に入り、まるで我が子のように可愛がってくれた。
三ツ星レストランに食事に連れて行ってくれたり、オペラやバレエ観劇にも連れて行ってくれた。
だが青山の好みからすると司は若すぎたようで、父が心配したように口説かれたり迫られたことはなかった。
彼はただ司を美しい美術品を愛でるように傍らに置き、鑑賞したかったようだ。

「君がパリを離れて寂しかったよ。
…美しい薔薇がいなくなり、パリの社交界は火が消えたようさ」
優雅な所作で薫り高いアッサムを口に運びながら歌うように囁く。
…相変わらずだと司は少し可笑しくなる。
「青山様も日本に帰国されたのですね。祖父母の家でお会いできるとは思いませんでした」
「高輪のホテル・カザマにも私の店の絵を飾って頂いているのだ。今日、その搬入と新年のご挨拶を兼ねてお祖父様にお会いしに行ったら…君がいて驚いたよ。
君は縣男爵のお宅にホームステイしていると聞いていたからね」

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