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夏の華 〜 暁の星と月 Ⅱ 〜
第9章 さよなら、初恋
司の貌がふっと曇る。
「…え、ええ…。そうなんです。お正月休みなので祖父母の家に…。祖父母は僕が泊まるととても喜んでくれるので…」
司の表情の変化とぎこちない返答を青山は見逃さなかった。
「…どうしたの?…縣家で何かあった?」
「…え?」
司が長い睫毛を瞬かせる。
「なんとなく君の表情が冴えないからさ。…パリの君は天真爛漫な美青年だった。太陽みたいに明るくて屈託がなくて…。
けれど今は…愁いを帯びた寂しげな花のようだ。
日本の風土のせいばかりではないだろう?…どうした?」

青山は人の機微に敏感だ。
司はふっと息を吐き、肘掛けに頬杖をつきながら口を開いた。
「…日本に来てから失恋したんです。二回も…。まだ二か月も経っていないのに…」
青山がバタ臭い仕草で両手を広げてみせる。
パリの一流のメゾンで仕立てさせたであろう洒落たスーツ姿の彼はそんな姿も堂にいっている。
「なんてことだ。君のように麗しい美青年をそんな目に合わすやつがいるなんて…!可哀想に…」
青山は立ち上がり、司の隣に腰を下ろした。
「…誰が君にそんな哀しい思いをさせたの?」
青山の美しく滑らかな指が司の頬を慰撫するように撫でる。
「話してごらん?話すだけで楽になることもある」
司は父の忍のように包容力がある大人の男性が好きだ。
側にいると安心する。
青山といると、父といるようで心が寛げるのだ。
「…一人は…パリから付きあっていた恋人です。…結婚するから愛人として付きあっていこう…て言われて…」
「なんてことだ…!可哀想に…。傷ついただろう…」
青山の力強い腕が司の肩を抱き締める。
「…ええ。…でも…ある人が僕を庇ってくれて…慰めてくれて…」
あの惨めなイブの夜…。
打ちのめされた司の心を優しく包んでくれたのは泉だった。
…温室でのワルツ…そして、初めてのキス…。
神社の初詣…そして、二人の初めての夜…。
…けれど…。

「…でも…その人にも嘘を吐かれていて…。あっという間の失恋です…」
口にすると更に自分が惨めになる。
青山の大きな手が優しく司の髪を撫でる。
「…そう。その嘘は本人に確認したの?」
「…ええ。…色々言い合う内に口論みたいになって…。
…最後まで聞かないで飛び出してきちゃいました。
…その人には他に大切なひとがいるようなのです」
…縣 薫…。
あのとびきりの美形だけれど、小生意気な少年…!

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