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夏の華 〜 暁の星と月 Ⅱ 〜
第2章 初戀のひと
暁が挨拶をして部屋を辞し、大階段を降りていると背後から声がかかった。
「暁!」
振り返ると大紋が佇んでいた。
「これから会社?」
「はい、春馬さん」
大紋が暁の前に立つ。
階段差があるとはいえ、男の背の高さに今更ながらに驚く。
彼が付けているフレグランスも昔と変わらずで、暁の胸はほんの少しだけ、甘く痛んだ。
「送るよ。…行こう」
暁は慌てる。
「あの…大丈夫です。車を待たせてありますから…」
大紋は滑らかに階段を降りながら
「僕も縣商会に顔を見せようと思っていたんだ。…一緒に行こう」
と、告げる。
玄関ホールで待機していた執事の生田に
「暁は僕が会社まで送る。心配いらないからね」
と伝えると
「さあ、行くよ」
暁の肩に手を置く。
「承知いたしました。…大紋様、どうぞよろしくお願いいたします」
生田は恭しく一礼をし、二人を見送った。

車寄せに止められた大紋の車は新型のフォードだ。
車に颯爽と乗り込んだ大紋に尋ねる。
「…車、買い換えたんですか?」
大紋は嬉しそうに助手席のシートを撫でる。
「先週来たばかりだ。…乗って」
有無を言わさない言葉に、暁は苦笑する。
「…相変わらずですね」
「え?」
「…相変わらず、強引」
暁はちらりと大紋を睨む振りをする。
その目付きが艶めかしくて、大紋はどきりとした。
「そ、そうかな…」
暁は助手席に滑り込み、座席に座る。
「ええ、貴方はいつも強引で…子どもの僕は付いてゆくのに精一杯でした…」
「…暁…」
暁はふっと笑いながら大紋を見上げる。
「…でも、今では良い想い出です…」
「…想い出…か…」
大紋は少し苦しそうな表情をした。
しかし、そんな自分を吹っ切るようにエンジンを掛け、車を滑らかに発車させる。

「…あの家を出たんだってね…」
「はい。今年の春に…」
「一人暮らし…じゃなくて…隣の家に月城が住んでいるんだって…?礼也に聞いたよ」
暁は、何と答えようか少し考えあぐね、しかし素直に頷いた。
「…はい。…僕が月城の隣に家を買ったんです。…少しでも彼の側にいたくて…」
「…そう…」
暁はそっと大紋を見上げた。
…端正な穏やかな表情に少しだけ淋しげな色が浮かんでいるような気がしたのは、自惚れだろうか…。

「…彼は優しい…?」
大紋は真っ直ぐ前を向きながら自然に尋ねる。
「…優しいです。…凄く僕のことを大切にしてくれています…」

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