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夏の華 〜 暁の星と月 Ⅱ 〜
第11章 海に映る星と月
「…月城。ありがとう」
車窓から差し込む初春の光が月城の稀有で怜悧な美貌を鮮やかに照らす。
彼の貌を見慣れることを、暁は知らない。
見るたびに身体が熱く痺れるような感情が未だに走る。

…いつまで経っても、僕は月城に恋をしたあの日のままだ…。
それを愛おしくも、微かに哀しく思う。
「…はい?」
優しく、包み込むような表情。
「兄さんの願いを聞いてくれて」

…本当は困惑したに違いない。
礼也が暁を溺愛し、過保護に接することを月城がどう思っているのか…本人が口にしたことはない。
暁がそれを尋ねたこともない。
月城が礼也に対して批判めいたことを言うはずはないからだ。
…だが心の中ではどう思っているのか、推し測る術はない。

暁も三十をとうに過ぎた弟をこと細かく心配し、まるで幼子のように甘やかす兄をどうかとは思う。
…けれど、本当はとても嬉しい。
自分を引き取ってくれた日から、ずっと全く変わらない愛情を注ぎ続けてくれる兄が、暁は大好きだ。
礼也に抱きしめられると、安心出来る場所に還れた安堵感とこの腕の中にいれば怖いものは何もないという揺るぎない確信と…幼い頃に感じた感情が温かな記憶と共に蘇るからだ。

月城の腕の中は、安堵だけでなく高揚とときめきと恋慕と欲情と…そして常に見え隠れする不安と焦燥がごちゃまぜになり、兄のように暁に心の平安は齎してくれはしない。
けれどそれは、暁が月城を誰よりも激しく愛している証しなのだから仕方ない。
切ない想いを抱きながら、暁はこの男にしがみつくように執着するのだ。

月城は、不安定な暁の心の均衡を全て分かっているかのように微笑む。
「とんでもございません。礼也様のお心遣いは何よりありがたく思っております」
…ただ…。
ふと少し色めいた眼差しを濃くしながら、暁の耳元に唇を寄せる。
「礼也様は相変わらず私の暁に触りすぎだと、少々妬いてはおりましたが…」
温度と湿度の高い色香を含んだ囁きを吹き込まれ、暁はうなじを朱に染める。
…一等車で良かった…。
そう思いながら、向かい側の最愛のひとに思い切り抱きつく。
「…愛してるよ…月城…」
暁から求めた口づけは汽車の揺れも手伝い、激しく荒々しくなるのに時間はかからなかった…。





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