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夏の華 〜 暁の星と月 Ⅱ 〜
第11章 海に映る星と月
月城の故郷の小さな駅に着いたのは、西の空が夕闇に染まり始めた頃であった。
汽車のタラップに脚を降ろすと、先に降りていた月城が暁に手を差し伸べた。
「段差がありますから、お気をつけてください」
無人の駅なのに安心し、手を握りしめながら降りる。
「ありがとう…」
初めての駅…月城の故郷の駅…。
暁は胸を高鳴らせ、周りを見渡した。
しんと冷えた空気の中に、潮の香りが漂っているのを感じる。
小雪がちらちら舞うプラットホームの端に、こちらを見つめて佇む若い女性の姿があった。
遠目にも目を引く美しい容姿をした女性だ。
誰かの迎えかな…と思いながらも一等車から出てきたのは暁と月城の二人だけだったな…と想いを至らせる。
不意にその女性が小さく叫びながら駆け寄って来た。
「兄さん!」
月城が振り返り、眼鏡の奥の切れ長の瞳が大きく見開かれた。
「凜!」
「…え?」
女性はそのまま、月城に子どものように抱きついた。
「兄さん!お帰りなさい…!」
「凜…。迎えに来てくれたのか…」
珍しく動揺する月城に驚く。
そんな暁を振り返ると、凜…月城の妹は目を輝かせて笑いかけた。
「暁様やね?…まあ…!写真とおんなじ…ううん。ずっとずっと綺麗な方やねえ…」
「…え…写真…?」
訳が分からず慌てる暁に、凜はにこにこと話しかけた。
「兄さんから何度か暁様のお写真が送られてきたんです。…王子様みたいな方やなあ…て思っとったら…ほんまに王子様やったわ…うち、こんなに綺麗な男の人、見たの初めてやわ」
暁は真っ赤になる。
「つ、月城…君、僕の写真を…?」
澄まし顔でそれには答えず、月城は改めて凜を紹介する。
「暁様、妹の凜です。」
「…初めまして。縣 暁です」
緊張しながら挨拶をする暁に、凜はくるりと回り着ているスカートを摘んで見せる。
「暁様。これ、見て下さい!」
「…!…それは…」
オフホワイト色の上着にローズピンクの長めのフレアスカート…。
リボンの付いた白いハイヒール。
品の良い真珠色の帽子には菫の花の造花があしらわれている…。
見覚えのあるその一揃いは、暁が凜の結婚祝いに贈ったものだった。
「…凛さん…」
胸が一杯になる暁に、凜はお礼を述べた。
「…その節は本当にありがとうございました。大切に着させていただいています」
優し気に笑うその涼し気な美貌は、月城にとてもよく似ていた。
汽車のタラップに脚を降ろすと、先に降りていた月城が暁に手を差し伸べた。
「段差がありますから、お気をつけてください」
無人の駅なのに安心し、手を握りしめながら降りる。
「ありがとう…」
初めての駅…月城の故郷の駅…。
暁は胸を高鳴らせ、周りを見渡した。
しんと冷えた空気の中に、潮の香りが漂っているのを感じる。
小雪がちらちら舞うプラットホームの端に、こちらを見つめて佇む若い女性の姿があった。
遠目にも目を引く美しい容姿をした女性だ。
誰かの迎えかな…と思いながらも一等車から出てきたのは暁と月城の二人だけだったな…と想いを至らせる。
不意にその女性が小さく叫びながら駆け寄って来た。
「兄さん!」
月城が振り返り、眼鏡の奥の切れ長の瞳が大きく見開かれた。
「凜!」
「…え?」
女性はそのまま、月城に子どものように抱きついた。
「兄さん!お帰りなさい…!」
「凜…。迎えに来てくれたのか…」
珍しく動揺する月城に驚く。
そんな暁を振り返ると、凜…月城の妹は目を輝かせて笑いかけた。
「暁様やね?…まあ…!写真とおんなじ…ううん。ずっとずっと綺麗な方やねえ…」
「…え…写真…?」
訳が分からず慌てる暁に、凜はにこにこと話しかけた。
「兄さんから何度か暁様のお写真が送られてきたんです。…王子様みたいな方やなあ…て思っとったら…ほんまに王子様やったわ…うち、こんなに綺麗な男の人、見たの初めてやわ」
暁は真っ赤になる。
「つ、月城…君、僕の写真を…?」
澄まし顔でそれには答えず、月城は改めて凜を紹介する。
「暁様、妹の凜です。」
「…初めまして。縣 暁です」
緊張しながら挨拶をする暁に、凜はくるりと回り着ているスカートを摘んで見せる。
「暁様。これ、見て下さい!」
「…!…それは…」
オフホワイト色の上着にローズピンクの長めのフレアスカート…。
リボンの付いた白いハイヒール。
品の良い真珠色の帽子には菫の花の造花があしらわれている…。
見覚えのあるその一揃いは、暁が凜の結婚祝いに贈ったものだった。
「…凛さん…」
胸が一杯になる暁に、凜はお礼を述べた。
「…その節は本当にありがとうございました。大切に着させていただいています」
優し気に笑うその涼し気な美貌は、月城にとてもよく似ていた。