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夏の華 〜 暁の星と月 Ⅱ 〜
第2章 初戀のひと
暁の家の客間に月城と泉を通した。
暁は、キッチンで温かいミルクティーの準備をしながら、先ほど断片的に聞いた泉の情報を整理する。
…泉くんは黒田公爵家で働いていたのかな…。
いくつくらいなんだろう…。
若く見えたから…僕より三つ四つ年下かな…。
…それにしても、月城に良く似ている…。
月城よりずっと野性味があるけれど…凄くハンサムだ…。
なんとなく胸ときめく自分を感じる。
暁がお茶の用意をして、客間に入ると兄弟はまだ睨み合うように座っていた。
「…まずはお茶をどうぞ…。疲れているみたいだから、お砂糖を入れたよ…」
温かいロイヤルミルクティーを二人に勧める。
「ありがとうございます。お手数をお掛けして申し訳ありません」
月城が折り目正しく、礼を述べる。
向かい側に座った泉はぶすっとした表情のまま、ジノリのティーカップを掴むと、ごくごくと麦茶でも飲むようにお茶を飲み干した。
「…美味いな。さすがブルジョアのお茶は違うね」
月城がすかさず諌める。
「泉!行儀が悪いぞ」
「いいよ、怒らないであげて。…ねえ、泉くんは黒田公爵家に勤めていたの?」
暁が取りなしながら、話題を変える。
「…はい…。実は…」
月城が端正な眉を顰めながら話した経緯は次のようなものであった…。
泉は18で故郷の能登から東京に働きに出て来た。
夜学の大学に通いながら働ける所は限られており、幾つかの職場を変わりながら、今年から兄の紹介で黒田公爵家に下僕として働いていた。
仕事の飲み込みも良く、順調に行っていたと思った矢先、公爵夫人が泉に色目を使うようになった。
泉はさりげなく躱していたのだが、昨夜、私室に呼び出され、キスをされた。
その時、帰宅が早まった公爵が部屋のドアを開け…。
「…後は、想像できるだろう?夫人は金切声を上げ、俺に無理やり襲われたと嘘を吐き、俺はその日のうちに屋敷を叩き出された…てワケ。
ちょっと、綺麗な坊っちゃま。なんか食うものある?…俺、昨夜から何も食ってなくてさ、腹ぺこなんだよね」
あっけらかんと話した挙句、食べ物をねだる泉に月城がテーブルを叩き、低く怒鳴る。
「泉!何を厚かましいことを言っているんだ!」
暁が月城の手に手を重ね、押し留める。
「いいんだ、月城。…泉くん、待ってね。糸さんがおはぎを作っておいてくれたんだ。今、持ってくるね」
暁は、泉に微笑みかけた。
暁は、キッチンで温かいミルクティーの準備をしながら、先ほど断片的に聞いた泉の情報を整理する。
…泉くんは黒田公爵家で働いていたのかな…。
いくつくらいなんだろう…。
若く見えたから…僕より三つ四つ年下かな…。
…それにしても、月城に良く似ている…。
月城よりずっと野性味があるけれど…凄くハンサムだ…。
なんとなく胸ときめく自分を感じる。
暁がお茶の用意をして、客間に入ると兄弟はまだ睨み合うように座っていた。
「…まずはお茶をどうぞ…。疲れているみたいだから、お砂糖を入れたよ…」
温かいロイヤルミルクティーを二人に勧める。
「ありがとうございます。お手数をお掛けして申し訳ありません」
月城が折り目正しく、礼を述べる。
向かい側に座った泉はぶすっとした表情のまま、ジノリのティーカップを掴むと、ごくごくと麦茶でも飲むようにお茶を飲み干した。
「…美味いな。さすがブルジョアのお茶は違うね」
月城がすかさず諌める。
「泉!行儀が悪いぞ」
「いいよ、怒らないであげて。…ねえ、泉くんは黒田公爵家に勤めていたの?」
暁が取りなしながら、話題を変える。
「…はい…。実は…」
月城が端正な眉を顰めながら話した経緯は次のようなものであった…。
泉は18で故郷の能登から東京に働きに出て来た。
夜学の大学に通いながら働ける所は限られており、幾つかの職場を変わりながら、今年から兄の紹介で黒田公爵家に下僕として働いていた。
仕事の飲み込みも良く、順調に行っていたと思った矢先、公爵夫人が泉に色目を使うようになった。
泉はさりげなく躱していたのだが、昨夜、私室に呼び出され、キスをされた。
その時、帰宅が早まった公爵が部屋のドアを開け…。
「…後は、想像できるだろう?夫人は金切声を上げ、俺に無理やり襲われたと嘘を吐き、俺はその日のうちに屋敷を叩き出された…てワケ。
ちょっと、綺麗な坊っちゃま。なんか食うものある?…俺、昨夜から何も食ってなくてさ、腹ぺこなんだよね」
あっけらかんと話した挙句、食べ物をねだる泉に月城がテーブルを叩き、低く怒鳴る。
「泉!何を厚かましいことを言っているんだ!」
暁が月城の手に手を重ね、押し留める。
「いいんだ、月城。…泉くん、待ってね。糸さんがおはぎを作っておいてくれたんだ。今、持ってくるね」
暁は、泉に微笑みかけた。