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夏の華 〜 暁の星と月 Ⅱ 〜
第11章 海に映る星と月
二人が案内されたのは離れの広々とした和室だった。
仕事柄客人が多い鶴来の家では、風呂や手洗いも備えた泊まり客用の離れを構えていたのだ。
まだ檜の匂いのする綺麗な風呂に浸かり、凜が用意してくれた浴衣に着替えた暁は縁先に立ち、障子の外の景色うっとりと眺めた。
北陸ではまだ雪がちらつく三月だが、白梅の花が夜目にも鮮やかに咲いていた。
…母屋から潤の甲高い笑い声が聞こえた。
思わず微笑む暁の身体が温かな男の体温に包まれた。
…湯から上がった月城だ…。
「…何をご覧になっていたのですか?」
「…母屋から潤くんの声がする…。…可愛いなあ…て…」
月城が笑いを漏らす。
「なかなか腕白な子どもです。…誰に似たのか…」
控えめだが可愛くて仕方がないと思っている心情が溢れ出るような口調だった。

暁の胸が小さく痛んだ。
黙り込んだ暁を直ぐに察する。
「どうされたのですか?」
自分の胸の前に回された月城の手を握り締める。
「…潤くんは月城に良く似ているね…」
幼子にしては端正に整った貌立ちをしていた。
「潤は凜に似たのでしょう。…凜は私に似ていますから…」
確かに凜は月城に良く似ている。
怜悧に整った人形のような貌立ち…。
東京でも滅多にいないような美貌だ。
修一が夢中になるのも無理はない。

一呼吸置いて暁は告げた。
「…もし、月城に子どもがいたら…あんな風に可愛いのかな…」
月城は端正な眉を顰める。
「暁様…」
「…月城に似たあんな綺麗な子どもがいたら…きっと…」
それ以上の言葉は形を成さなかった。
月城が暁を自分の方に振り向かせ、そのひんやりとした指で暁の薄紅色の唇を塞いだのだ。
静かだが強い声が暁の鼓膜に響く。
「暁様。私は自分に良く似た子どもなど欲しくはありません。子どもなんていらない。貴方がいればそれで良いのです」
「…月城…」
潤んだ黒い瞳が男を見上げる。
「…ごめんね…」
…君に子どもを持たせることができなくて、ごめんね…。
暁の罪の意識が月城の胸に鋭く突き刺さる。
「馬鹿なことを…!貴方は馬鹿だ。私は貴方以外の人間に何の興味もないというのに…!」
「…月城…」
暁の花のような唇が細かく震える。
もう何も言わせまいとするかのように、月城はその唇を荒々しく塞ぐ。
「…愛しているよ。暁…」
ただ愛の言葉だけが、くちづけとともに切ない暁の胸の中に静かに染み入ってゆく。


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