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夏の華 〜 暁の星と月 Ⅱ 〜
第2章 初戀のひと
翌朝、暁は少し早く起きて、隣家に向った。
泉を起こす為だ。
月城は昨夜、あれから泉に何かを言い含めると、北白川の屋敷に慌ただしく戻っていった。
見送る暁の頬に触れ、額を合わせて優しく…少し照れたように
「…申し訳ありませんでした…」
と詫びた。
性急に暁を求めたことだろう…。
暁は紅くなりながら、首を振った。

…思い出すと、身体の奥が疼く。
倒錯的な慌ただしい愛の交歓だった。
あんな風に達したのは初めてで、我知らずに乱れてしまったことが恥ずかしい…。

暁は気持ちを切り替えるように深呼吸し、泉が寝ている一階の和室の襖に手を掛ける。
「…泉くん、起きてる?…朝食だよ」
…案の定、返事はない。
「…泉くん…入るよ…」
そっと襖を開ける。

…一組の布団の中で青年が寝んでいる。
掛布団を掛けずに寝たらしい。
剥き出しの半裸が目に入る。
裸の引き締まった上半身が見え、暁は息を呑む。
…月城より、肌の色が浅黒い…。
小麦色の健康的な肌色の肩、逞しい胸板、筋肉質な腹部…
美しい若木のような若者の身体がそこにあった。

暁は少しドキドキしながら、泉に近づく。
静かに寝息を立て眠っている。
美しい顔立ちだ。
…端正な目鼻立ちは月城に良く似ている。
泉の方がやや甘やかな顔立ちだろうか…。
肉惑的な唇が色気を醸し出している。
思わず見惚れていると、不意に腕を掴まれ引き寄せられた。
「…やっ…なに…を…」
強く引き寄せられ、暁の身体は泉の裸の胸に乗りかかる形になる。
泉の切れ長の瞳が笑っている。
「…おはよう、お坊ちゃま」
揶揄うような口調に、さすがの暁もむっとして、泉から離れようと身体を起こす。
…が、その華奢な腕は泉に掴まれたままであった。
「…はなし…て…」
抗う暁などお構い無しに、尚も自分の方に引き寄せる。
暁と泉はくちづけするような距離まで近づいた。

「…ねえ、あんたさ。…昨夜、兄貴とヤッてたの…?」
暁の黒曜石のような濡れた瞳が大きく見開かれる。
「な、なにを…」
泉の指が暁の白くほっそりとした首筋をゆっくり撫で上げる。
暁はぞくりと背筋を震わせる。
「…兄貴の歯型だろ?それ…」
はっと慌てて抑える。
泉はにやりと嗤った。
「…あんな取り澄ました貌をして、そんな嫌らしいことするんだ、兄貴…」
「泉くん!」
暁は諫めようとするが、泉は腕の力を弱めずに暁を見つめる。

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