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夏の華 〜 暁の星と月 Ⅱ 〜
第12章 その愛の淵までも…
暁は教会の礼拝堂の椅子に座り込み、ぼんやりとイタリア大理石でできたマリア像を見つめていた。
…なぜ、あんなことを言ってしまったのだろう…。

自分の言葉を聞いた月城の端正な貌が、苦しげに歪んだ様を思い出し、胸が張り裂けそうに痛む。
…あんな…酷いことを…。

月城が自分のことを理解してくれてないなんて…思ってもいないのに…。
それなのに、まるで月城と春馬さんを比べるようなことを言ってしまった。
冷静に考えてみたら、月城が梨央さんを抱きしめるわけがない。
…月城が自分を本当に愛してくれていることは身に染みてわかっているはずなのに…。
会えない寂しさから月城を疑い、側にいられる梨央さんに嫉妬してしまったんだ。

…本当は、謝りたい。
謝って月城に抱きしめてもらいたい。

…けれど…。
あんな酷いことを言った僕を月城はきっと失望し、愛想を尽かしたのではないだろうか。

そう思うと、身体が竦み…もう月城に会う勇気を持てないでいた。

…本当は今日家に帰宅して、月城に謝罪するつもりだったのだ。
けれど、とてもそんなことはできない。
どんな貌をして、月城に会えば良いのか…。
謝っても背を向けられたら、もう立ち直れないくらいに打ちのめされるだろう…。

その逡巡の気持ちが暁の足取りを重くさせ、気がつくと浅草の教会に辿り着いていたのだ。

何十回目かの溜息を吐いた時…
暁の背後から石畳みの床を踏み鳴らす靴音がゆっくりと聞こえた。

「…どうされたのですか…?そんなに哀しそうになさって…」
…靴音は暁の横で止まった。
振り仰ぐそこには…
「…藍染くん…」
北白川伯爵家の下僕、藍染が佇んでいた。
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