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夏の華 〜 暁の星と月 Ⅱ 〜
第12章 その愛の淵までも…
不意に現れた月城に、暁は驚いたように眼を見開いた。
…まるで間男と姦通しているところを見られた人妻のような表情だった。
…いや、自分の歪んだ心がそう見せたのだ。
嫉妬の炎を抑えるのに精一杯な月城は、暁に優しい言葉もかけてやれなかった。

大紋が暁を庇い、何もないことを証言した。
そんなことは最初から分かっていた。
苛立つ心を抑え、暁と二人きりになった。

嫉妬の棘は、月城の心に刺さり続けていた。
つい、暁に大人気ない言葉を投げかけてしまった。
もちろん本意ではない。
暁と大紋が余りに似合いの二人に見えた妬心から出た戯言だ。
すると、暁が月城と梨央の仲を疑うような言葉を発した。
馬鹿馬鹿しい。
誰の戯言を信じているのか。
…いや、自分を信じていないのか?と、ついきつい口調で暁を責めてしまった。

売り言葉に買い言葉で暁が珍しく怒りを露わにした。
「…君は、春馬さんほどに僕を理解してくれているのか?」

月城には一番堪えた言葉だった。
暁には分からないかもしれないが、月城には常に大紋に対して目に見えぬ劣等感の感情があるのだ。
月城の顔色が変わったのを見て、暁はその場を立ち去った。
…追いかける勇気は持てなかったのだ。

こんなことくらいで言い争いをし、暁を傷つける自分に…暁を追いかける資格はないような気がしたのだ。

月城は、そのまま松濤の屋敷を後にした。

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