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夏の華 〜 暁の星と月 Ⅱ 〜
第12章 その愛の淵までも…
「仕事中すまないね。…少し、いいかな?」
大紋は知的な目元に優しげな笑みを浮かべ、笑いかけた。
月城は素早く立ち上がり、恭しく一礼をする。
「大紋様がご来訪されているとは存じませず、失礼いたしました」
本日の来客予定表の中に彼の名前はなかったので、月城は不手際がなかったかを案じたのだ。
大紋は砕けた様子で手を振った。
「僕が連絡なしに伺ったのだよ。…綾香さんに頼まれたイタリア歌曲の著作権の件での書類が整ったのでね。…近くに用事もあったから、僕が持参した」
「そうでしたか…。それは大変お手数をお掛けいたしました。
梨央様もすっかり良くなられました。
今、お取り次ぎいたします」
月城は穏やかな微笑を浮かべながら、階上に促そうとした。
大紋のような尊い身分の者が、階下の使用人の場所にいることは決して良いことではないからだ。
扉を開こうとする月城の背中に、声がかかる。
「…君に話があってきたのだ。月城」
振り返る月城に、大紋は悪戯めいた口調で尋ねる。
「…もしかして…まだ暁と仲直りしていないのかな…?
暁も意地っ張りなところが多分にあるが、君も大概のようだな」
月城は観念したようにふっと息を吐き、肩を竦めて見せた。
「…今私が一番お会いしたくないのは貴方ですよ。
どなたのせいでこうなったと思っておいでですか?」
今までと打って変わって露悪的な月城の言葉に大紋は可笑しそうに声を立てて笑う。
「僕のせいか?それは光栄だな。僕はまだ君達の仲に影響を与えているのか。これは愉快だ」
「…ご冗談を…。私はずっと貴方に嫉妬し続けているというのに…」
近寄り難いほどに端正な貌で寂しく笑う月城の肩に手を掛ける。
「正に冗談だ。…僕はもはや君達の仲に何の関係もないよ。…暁はずっと君だけしかみていない。君しか愛していない。それは君だって分かり切っているはずだ」
…悔しいがね…と、やや本音を交わらせながら告げる。
「…大紋様…」
「もっと自信を持ってくれ。…僕なんかずっと昔から君に脅威を感じていたんたからな。…そうじゃないと僕の立つ瀬がない」
朗らかな笑いながらも、真摯に告げる。
「暁には君が一番相応しい…。君しか暁を幸せにはできないんだ」
「…大紋様…」

…大紋に敵わないと感じるのは、こんな時だ。
だが同時に、こんなにも素晴らしい男だからこそ、暁は彼を愛したのだと納得せざるを得ない。

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