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夏の華 〜 暁の星と月 Ⅱ 〜
第2章 初戀のひと
「…本当かよ…」
暁は何でもないことのように淡々と話し出した。
「…僕の母は縣家に仕えるメイドだった。…縣男爵のお手つきになり、僕を身籠ったが、奥様の逆鱗に触れ、屋敷を追い出され…貧しさの中、母は僕を生み、いかがわしい仕事をしながらも育ててくれた。だが、14歳の時に、その母も病で亡くなった。…人買いに攫われそうだった僕を救ってくれたのが、兄…今の縣家の当主だ。
兄はとても慈悲深く優しい人だ」
兄と口にする時、暁はとても嬉しそうな表情を浮かべた。
泉はぎこちなく、だが素直に口を開いた。
「…そうなのか…。…あんた、生まれながらのお貴族様みたいにお綺麗で上品だったから…ちっともわからなかった…」
暁は蓮の花が咲いたように密やかに笑った。
「ありがとう。…もし、そう見えたのなら…それは兄のお陰だ。…兄は僕に溢れる程の愛情を注いで、そして最高の教育を受けさせてくれた。腹違いの弟を…最初から偏見の眼で見ずに、ずっと変わらぬ愛を注いでくれた。
…兄は…縣男爵はそういう寛大で優しい方だ。君が真面目に仕事をすればそのまま評価してくれるはずだ」
泉は穿ったような目つきをした。
「…本当か?…俺は幾つかの貴族の屋敷に下僕として仕えたが…貴族とは名ばかりの下劣な奴が殆どだったぜ」
若いのに世の中を斜に構えて見るような口ぶり…。
…泉は、過去に仕えた屋敷で辛い眼にあったのかもしれないな…。
暁はそう思った。
「…では、考えを改めて貰おう。縣男爵は勿論のこと、奥様の光夫人もとても人間的に素晴らしい尊敬に値する方だ。執事の生田は厳しいが、理不尽なことは言わない。使用人達にも尊敬されている。
…どう?働きたい?働きたくない?決めるのは君だ」
暁の美しい玻璃のような美貌が泉の前に迫る。
泉の心臓が跳ね上がる。
…何でこいつはこんなに綺麗なんだよ…!
自分でも訳のわからないもどかしい感情に襲われる。
「…は、働きたい…よ」
途端に暁がお日様が差したように笑った。
その笑顔にどきどきする。
「良かった!…じゃあ、今日の面接、頑張ろうね。僕もできるだけ口添えするから」
テーブルの上に置かれた泉の手を上から励ますように優しく握られ泉は飛び上がるように驚き、慌てて手を払いのける。
「…さ、触るなよ!」
そのまま、朝食の続きを怒ったような貌で食べ始める泉を暁は、微笑ましく見つめていた。
暁は何でもないことのように淡々と話し出した。
「…僕の母は縣家に仕えるメイドだった。…縣男爵のお手つきになり、僕を身籠ったが、奥様の逆鱗に触れ、屋敷を追い出され…貧しさの中、母は僕を生み、いかがわしい仕事をしながらも育ててくれた。だが、14歳の時に、その母も病で亡くなった。…人買いに攫われそうだった僕を救ってくれたのが、兄…今の縣家の当主だ。
兄はとても慈悲深く優しい人だ」
兄と口にする時、暁はとても嬉しそうな表情を浮かべた。
泉はぎこちなく、だが素直に口を開いた。
「…そうなのか…。…あんた、生まれながらのお貴族様みたいにお綺麗で上品だったから…ちっともわからなかった…」
暁は蓮の花が咲いたように密やかに笑った。
「ありがとう。…もし、そう見えたのなら…それは兄のお陰だ。…兄は僕に溢れる程の愛情を注いで、そして最高の教育を受けさせてくれた。腹違いの弟を…最初から偏見の眼で見ずに、ずっと変わらぬ愛を注いでくれた。
…兄は…縣男爵はそういう寛大で優しい方だ。君が真面目に仕事をすればそのまま評価してくれるはずだ」
泉は穿ったような目つきをした。
「…本当か?…俺は幾つかの貴族の屋敷に下僕として仕えたが…貴族とは名ばかりの下劣な奴が殆どだったぜ」
若いのに世の中を斜に構えて見るような口ぶり…。
…泉は、過去に仕えた屋敷で辛い眼にあったのかもしれないな…。
暁はそう思った。
「…では、考えを改めて貰おう。縣男爵は勿論のこと、奥様の光夫人もとても人間的に素晴らしい尊敬に値する方だ。執事の生田は厳しいが、理不尽なことは言わない。使用人達にも尊敬されている。
…どう?働きたい?働きたくない?決めるのは君だ」
暁の美しい玻璃のような美貌が泉の前に迫る。
泉の心臓が跳ね上がる。
…何でこいつはこんなに綺麗なんだよ…!
自分でも訳のわからないもどかしい感情に襲われる。
「…は、働きたい…よ」
途端に暁がお日様が差したように笑った。
その笑顔にどきどきする。
「良かった!…じゃあ、今日の面接、頑張ろうね。僕もできるだけ口添えするから」
テーブルの上に置かれた泉の手を上から励ますように優しく握られ泉は飛び上がるように驚き、慌てて手を払いのける。
「…さ、触るなよ!」
そのまま、朝食の続きを怒ったような貌で食べ始める泉を暁は、微笑ましく見つめていた。