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夏の華 〜 暁の星と月 Ⅱ 〜
第12章 その愛の淵までも…
置屋の女将に呼ばれ、現れた染乃を見て藍川の母親は息を飲んだ。
染乃は想像をはるかに超えて美しく、妖艶な女だったからだ。
座敷前だったらしく、既に着物も化粧もきちんと仕上がっていた。
潰し島田に高価な翡翠の簪を挿し、しけが揺れる様はぞっとするような艶やかさだった。
黒留袖のお引き摺りは大輪の牡丹が描かれている。
銀糸をふんだんに使った流し柳の帯を結んだ腰は折れそうなほどに華奢だった。
染乃は、目の前に現れた藍川の両親を見ても顔色ひとつ変えずに静かに座った。
白く塗られた卵形の顔には古典的な雛人形のように整った目鼻立ちが美しく並んでいた。
…その瞳は黒々と夜の帳のように濡れ、底なし沼のような妖気すら漂い、形の良い唇は紅い寒椿のように色鮮やかに染められていた。

…染乃は、女から見ても驚くほどに美しい女であったが、同時に藍川の母親は、一目でこの女は必ず息子に仇をなす女だと直感で見抜いた。
母親は、老舗の呉服屋の主人らしくそこそこの女道楽をする夫に半分眼を瞑ってきた。
呉服屋という仕事柄多少の色事は仕方がないし、夫は女あしらいも上手く、丁度良い加減で遊ぶ男だったからだ。
懇意にしている芸者達も風の噂では、そう深入りすることなく、揉めるような女達ではなかったようだ。
美人よりは場を和ませるような愛らしい芸者を好むのも波風が立たない要因だったらしい。

…しかし、染乃は違った。
現れただけで部屋の空気がひんやりとするような…凄味と存在感がある美貌に加え、どこか悲劇的な匂いがするような退廃的な色香が彼女の周りには纏わり付いていたのだ。
同時に、これほどの女なら息子が骨抜きになっても致し方ないと心のどこかで腑に落ちた部分があった。

…だからこそ、こんなに禍々しいほどに美しい女をたとえ芸者でなくとも息子の嫁にする訳にはいかないと、母親は決意を新たにしたのだった。
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