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夏の華 〜 暁の星と月 Ⅱ 〜
第12章 その愛の淵までも…
「染乃さん、回りくどい話はなしにしましょう。
息子は貴女にすっかり入れあげてしまっているようです。結婚したいとまで言いだしました。
けれど涼一郎はまだ学生の身です。
そして芸者の貴女を歴史ある藍川屋の嫁に迎えるわけにはいきません。
貴女も玄人の世界のおひとならお判りでしょう。
どうか貴女の方からきっぱり別れてやってください。
ここに幾ばくかのお金も用意しました。
貴女の借金も大分楽になるはずです。
どうぞお納め下さい」
切口上で捲し立てる母親に、父親はまあまあ…と取りなした。
普段大人しく控えめな妻が人が変わったようにいきり立つ様に驚きながらも、老舗の主人らしく穏やかに品格を保ちながら染乃に語り始めた。

「世間知らずで野暮な息子には染乃ちゃんみたいな傾国の美女は刺激が強すぎたようだ。
…あんたもきっとあんな青二才が毎日のように通い詰めちゃあ迷惑だろう。
あんたが涼一郎に本気で惚れる訳はないだろうし…。
染乃ちゃんの方からさっさと振ってやって、あいつの目を覚まさせてくれないかね」

染乃はふっと唇を歪ませると薄く笑った。
「当たり前ですよ、旦那さん。
…何を勘違いされたんだか、坊ちゃんは…。
ちょっと優しくしたらすっかり旦那気取りになっちまって…。
いくら美男子でお利口か知らないけれど、仰る通りありがた迷惑なんですよ。
…大方、おうちでさぞ甘やかされていらしたんでしょうねえ…」
振ってくれとは言ったものの、最愛の息子をけんもほろろに貶され、母親はむっとした。

そんな母親の様子を気にも留めず、染乃はしなやかに立ち上がり左褄を取るときっぱりと言い放った。

「坊ちゃんにお伝え下さい。
染乃はもう金輪際坊ちゃんにお会いしないと…。
精々ご学業にお励み下さいと…。
…それから…このお金はお持ち帰りください。
あたしにはお大尽の旦那の身請け話は降るようにあるんです。
こんなはした金じゃあ、帯留めひとつ買えやしない。
見くびられたものですよ」
…そう美しい貌に冷笑を浮かべ、呆気に取られる二人を尻目に涼やかに言い放ったのだった。




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