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夏の華 〜 暁の星と月 Ⅱ 〜
第12章 その愛の淵までも…
「染乃…⁈」
驚愕したような、信じられないような表情をした青年が染乃の貌を凝視する。
一緒に死んでくれ…などと熱病に浮かされたようにかき口説いたが、若者のこと…半ば本気ではなかったに違いない。
染乃は吐息が触れ合う距離でまじないをかけるかのようにじっと藍川を見つめた。
「…坊ちゃんには申し上げなかったけれど、あたしは来年、四国の海運王の元に落籍されます。
あんな爺さん、好きでもなんでもないけれど、置屋のお母さんがまとめた話だから断れないんです。
…でも、坊ちゃんに出会って…初めて恋を知ってやっぱり好きなひとと添い遂げたいと思いました。
…この身体を坊ちゃん以外の男に触れさせたくない…て…」
「…染乃…!」
藍川の瞳が感激で潤み始める。
美しい若い男の涙を見る内に、あたかもそれが本当の己れの気持ちのような気がしてくる。
自分は目の前にいるこの若くて綺麗な男を愛して、愛ゆえに潔癖に純愛を貫こうとしているのだ…と。
その想像は染乃を甘く陶酔させた。
「…だから…あたしと心中してください…。涼一郎さん…」
染乃が言うが早いか、藍川は染乃の唇を荒々しく奪った。
「…もちろんだよ、染乃。…僕だって、君がいない人生なんて考えられない!…一緒に死のう、染乃。
一緒に死んで、あの世で夫婦になろう…」
「…涼一郎さ…ん」
…そうして二人は何かに取り憑かれたかのように激しく求め合い、何度も極め合ったのだった…。
死と隣り合わせの性愛は、例えようもないほどに毒なる甘美を含んだ悦楽を味わせたのだから…。
驚愕したような、信じられないような表情をした青年が染乃の貌を凝視する。
一緒に死んでくれ…などと熱病に浮かされたようにかき口説いたが、若者のこと…半ば本気ではなかったに違いない。
染乃は吐息が触れ合う距離でまじないをかけるかのようにじっと藍川を見つめた。
「…坊ちゃんには申し上げなかったけれど、あたしは来年、四国の海運王の元に落籍されます。
あんな爺さん、好きでもなんでもないけれど、置屋のお母さんがまとめた話だから断れないんです。
…でも、坊ちゃんに出会って…初めて恋を知ってやっぱり好きなひとと添い遂げたいと思いました。
…この身体を坊ちゃん以外の男に触れさせたくない…て…」
「…染乃…!」
藍川の瞳が感激で潤み始める。
美しい若い男の涙を見る内に、あたかもそれが本当の己れの気持ちのような気がしてくる。
自分は目の前にいるこの若くて綺麗な男を愛して、愛ゆえに潔癖に純愛を貫こうとしているのだ…と。
その想像は染乃を甘く陶酔させた。
「…だから…あたしと心中してください…。涼一郎さん…」
染乃が言うが早いか、藍川は染乃の唇を荒々しく奪った。
「…もちろんだよ、染乃。…僕だって、君がいない人生なんて考えられない!…一緒に死のう、染乃。
一緒に死んで、あの世で夫婦になろう…」
「…涼一郎さ…ん」
…そうして二人は何かに取り憑かれたかのように激しく求め合い、何度も極め合ったのだった…。
死と隣り合わせの性愛は、例えようもないほどに毒なる甘美を含んだ悦楽を味わせたのだから…。