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夏の華 〜 暁の星と月 Ⅱ 〜
第12章 その愛の淵までも…
染乃は、静かに寝息を立てる藍川の端正な貌を愛しげに撫でる。
…こんな風に男の寝顔を見つめるのは初めてだ。
芸者の自分は、仮寝しか許されなかった。
ひとときの愛の交歓が済めば、すぐに置屋なり座敷なりに戻らなくてはならなかったからだ。
例え、この青年に情を残していたとしても…。

…けれどもうそんな想いもしなくていい…。
自分は、この美しい若者の最愛のひととして人生を終えることが出来るのだ。

偽りの愛に満ちた穢れた人生を生きてきた自分に、この青年は最後に美しい花道を残してくれたのだ。

…ひとは自分のことを吉原きっての美貌の芸者、高嶺の花ともて囃した。
同輩の芸者たちには
「染乃ちゃんは幸せだねえ。その美貌に身体に唄声…。
あんたは誰に媚びなくてもお大尽があっちから近寄ってきてちやほやしてくれるんだから」
とやっかみ半分で評した。
しかし、染乃は一度として自分の美貌や境遇を自慢に思ったことはない。

…自分は貧しくとも真に愛する男と二人で生きてゆきたかった。
好きでもない男に身を任せ、偽りの愛の言葉を囁くことは唾棄するほど嫌だったのだ。
…それに気づかされてくれたのは、この美しい青年だ。
世間知らずで、まっすぐで、穢れてなくて、清潔で…。
こちらがたじろぐほどの真実の愛を捧げ続けてくれた。

最初はその清潔さを憎んだ。
小馬鹿にもした。
彼を利用して、あの高慢ちきな母親を苦しめてやろうとも思った。

…けれど、今は違う。
彼の愛に感謝している。
自分がこの美しく穢れのない青年に愛されるに足りる女なのだと自負させてくれた、彼の優しさに清らかさに感謝している。

…だから、薬をすり替えた。
強い酒を飲ませ、害のない薬を口移しで飲ませた。
激しい情交のあとのこと、若い青年は素直に眠ってしまった。
染乃は藍川の形の良い唇に愛を込めて口づけをした。
そして照れた。
…あたしがこんな初心な口づけをするなんて…。
微笑みながら小瓶の睡眠薬を全て煽る。
吉原の潜りの医者に調合させた薬だが、効き目は確かだ。
しつこい客を眠らせる時にこっそり使ったことがあるから分かっていた。



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