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夏の華 〜 暁の星と月 Ⅱ 〜
第12章 その愛の淵までも…
…引き出しの中には、引きちぎられたクロッキー帳の画用紙の束が溢れんばかりに詰め込まれていた…。
その画用紙に描かれていたのは…全て暁であった。
月城は物も言わずに、荒々しくそれらを掴む。

…鉛筆だけで描かれたそれは、あたかも暁が目の前に存在しているかのように美しく…妖しいまでの耽美さで描かれていた。
緻密で精密なタッチは大変に写実的で、まるでプロの画家の筆遣いであった。
しかし、月城の胸に浮かんだのは美しい暁の姿への感動ではなくその、姿を写し取るかのように余りに緻密に描かれていることへの禍々しさと、不吉な予感であった。

…描かれている暁は全て笑っていた。
まるで、恋人に笑いかけるような…甘やかな微笑みだ。
厳しい表情で絵を捲り続ける。
大紋は月城の心中を慮っているのか、無言でそれを見守る。
月城の美しい手が、びくりと止まった。

…最後の一枚は…全裸の暁の絵であった。
しかも、その薄い瞼は閉じられていて…死を思わせるような表情をしていた。
月城の手が震えだした。
…彼の胸に去来する藍川の言動が、次々にパズルのピースが合わさるように符合し始めたのだ。

「…藍川は…暁様のことをとても気にしておりました。
恐らくは…恋をしていたのではないでしょうか…」
大紋は厳しい表情を浮かべ、唸った。
「この絵を見ると、穏やかではないな。
…月城、今すぐ自宅に行って暁の無事を確認した方がいい」
大紋の意外な言葉に、月城は眉を寄せた。
「暁様はまだ松濤のお屋敷です。今朝、自宅の家政婦に確認しましたが、今日もお戻りではないと申しておりました」
大紋が首を振り、きっぱりと否定した。
「そんな筈はない。昨日、礼也が話していたのだ。
暁は麻布十番の自宅に帰宅したと。…何度か止めたが帰ると言って聞かなかったと…」
二人の男ははっと目を合わせた。

…藍川の突然の失踪…暁はまだ帰宅してない…。
そして…禍々しくも暗く不吉な絵の数々…。
「…まさか…まさか藍川が暁様を…⁈」

大紋ははたと気づいたかのように、呟いた。
「今、思い出した…。暁は誰かに似ていると思ったのだ。
…一度だけ見た藍川の恋人…染乃さんの写真だ…。
暁は…染乃さんによく似ているのだ…!」

月城は全身が凍りつくような衝撃を受けた。
…まさか…藍川は暁様を攫って…心中しようとしているのではないか…⁈
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