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夏の華 〜 暁の星と月 Ⅱ 〜
第12章 その愛の淵までも…
「藍川を探します。…一刻も早く探さなくては…暁様が…!」
蒼白な貌で、部屋を出ようとする月城の肩を大紋が押しとどめる。
「落ち着け。先ずは藍川の実家に連絡を取ってみよう。何か分かるかも知れない…」
月城は声を荒げた。
「そんな悠長なことをしている場合ですか⁈暁様が殺されるかも知れないのに‼︎」
普段、冷静沈着で決して大きな声など上げたことがない…ましてや大紋相手に、そのようなことを考えもつかぬ筈の月城の豹変ぶりに、大紋は思わず眼を見張った。
彼が如何に暁を案じ、気が動転しているかが如実に分かったのだ。

…その時、扉の外から小さな…しかししっかりとした声が聞こえた。
「…あの…月城さん…」
振り返ると、キッチンメイドの梢が白いエプロン姿で佇んでいた。
月城は漸く普段の己れを取り戻し、努めて冷静な声で尋ねた。
「どうしました?梢」

梢は一歩、部屋の中に入りながら意を決したように口を開いた。
「…あの…。私、藍染さんを見かけました」
月城の眼鏡の奥の瞳が大きく見開かれ、梢の腕を掴まんばかりに詰め寄った。
「どこですか⁈彼は、どこにいるのですか⁈」
梢は常に冷静で決して取り乱すことのない完璧な執事が感情を露わにする様子を目の当たりにし、驚きながらも続けた。
「…根津にある古い家です。そこに入ってゆくのを昨日見かけました。
…私、藍染さんのことが忘れられなくて…それで彼を付けていたんです。
そうしたら、藍染さんは何か大きなものを抱きかかえるようにしながらその家に入っていったんです…!
その時は何だか分からなかったんですが…今、月城さんと大紋様のお話を立ち聞きして…もしかして…もしかして…それが暁様かも知れません…!」
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