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夏の華 〜 暁の星と月 Ⅱ 〜
第12章 その愛の淵までも…
大紋が手配した車に乗り、月城と暁は自宅に帰宅した。
藍川は大紋が引き受けた。
暁が警察に通報することを拒んだからだ。
「…僕は大丈夫です。藍染くんのことは春馬さんにお任せします。…藍染くんの将来に傷が付かないようにしてあげて下さい」
と。
月城は何も言わなかった。
大紋は微笑んだ。
「君は相変わらず優しいな…」

車から降りる時、月城は暁を抱き上げそのまま玄関に入った。
暁は慌てた。
「月城!じ、自分で歩けるから…!」
月城は決して降ろそうとしなかった。
暁をしっかりと抱いたまま、歩き続ける。
硬い表情は変わらず、その完璧な美貌と相まって暁を不安な気持ちにさせた。

…月城は…怒っているのだろうか…。
僕に…隙があったからこんなことになったと思っているのではないだろうか…。
月城に厭われていたら…と思うと胸が痛む。

玄関に入り、三和土で漸く降ろされる。
…と、ひと繋ぎに強い力で抱きすくめられた。
息もできないほどに強い強い抱擁だった。
「…つ、月城…?」
「…私のせいだ…。私がもっと、藍染の言動に気をつけていたら…貴方をこんな危険な目に合わせることはなかったのに…!
…申し訳ありません…!」
月城の声は震えていた。
…常に冷静沈着な月城が…声を震わせ、まるで奪われることを恐れる子どものように暁を抱きしめて離さなかった。
「…月城…」
暁は首を振りながら必死に彼にしがみつく。
「君のせいなんかじゃない…!
…僕こそ…つまらないことで意地を張って…君のことを疑うようなことを言って…君を困らせた…。
ばちが当たったんだ…」
漸く腕の抱擁が解かれ、月城のひんやりとした手が暁の小さな美しい貌を覆う。
月城の冴え冴えとした完璧な美貌には優しい微笑みが、浮かんでいた。
「貴方のせいではありません。私こそ…貴方のお寂しいお気持ちを思い遣ることができなかった…。
…改めて申し上げます。梨央様は私の大切なご主人様です。
しかし貴方は…それ以上の…いえ、比べることなどできない唯一無二の私の命より大切な存在です。
先程、貴方が藍染に囚われ、奪われそうになっているのを見た瞬間、自分でも信じられないくらいに凶暴な衝動に駆られました。
もし、貴方が傷つけられていたのなら私は間違いなく藍染を殺していたでしょう。
私は貴方の為ならば例え人を殺めることも辞さない人間なのだと初めて悟りました…」
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