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夏の華 〜 暁の星と月 Ⅱ 〜
第2章 初戀のひと
暁はそのまま、階下へ向かい泉を執事の生田に引き合わせた。
生田は穏やかだが毅然とした口調で告げた。
「それでは、責任を持ってお引き受けいたします。
…暁様のご紹介とはいえ、特別扱いはいたしませんよ」
暁は頷いた。
「もちろんだよ。生田、厳しく指導して。それが彼の為になるから…」
生田は泉をじっと見た。
「…私は君の過去は問わない。君が二つの貴族の屋敷をなぜ辞めたのかも、特に興味はない。
これからの君の働きぶりだけを評価する。…私の指導は厳しいが付いてこられるかな…?」
泉は表情を引き締めると、小さな声だがはっきりと答えた。
「…お願いします」

暁はほっと胸を撫で下ろした。
「じゃ、頑張って。…僕も時々顔を見に来るからね。
…あ、泉くん、他の皆んなにもちゃんと挨拶して、仲良くね。最初が肝心だからね。にこにこしていたら君はハンサムで感じが良いんだから…」
あれこれ世話を焼こうとする暁に、鬱陶しそうに眉を顰め
「…うるせえなぁ。分かってるよ」
と答えたのに対して、すかさず生田から厳しい言葉が飛んだ。
「暁様に向って、何と言う口の利き方だ。そんな言葉遣いでは到底、表に出すことは出来ないぞ」
暁は泉の曲がったネクタイを直してやりながら、
「言葉遣いは一番に直さなきゃね」
とにっこりと笑った。
泉は憮然としながら為すがままになっていた。


「じゃ、僕は義姉さんと薫くんの顔を見てから帰るよ」
と、暁は生田に告げた。
生まれたばかりの甥っ子の薫が、暁は可愛くてならないのだ。
生田も表情を和らげた。
「奥様が喜ばれます。本日、丁度床上げをされましたから、もうお部屋においでですよ」
「ご回復も順調で良かった」
笑顔で階上に上がろうとする暁を、泉が不意に呼び止める。
「あ、あの…!…あ、あ、暁様…」
驚いて暁が振り返る。
泉がやや怒ったような緊張したような複雑な表情で…しかし、きちんと頭を下げた。
「…ありがとうございました…」

暁の胸の内が白湯を飲んだ時のように温かくなった。
「…頑張ってね。泉くん」
暁が笑いかけると、ほんの少しだが泉が笑い返した。
…その貌はやはり月城に良く似ていて、暁の胸はきゅっと締め付けられるように甘く疼いた。

















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