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夏の華 〜 暁の星と月 Ⅱ 〜
第2章 初戀のひと
元々、大層美しい青年ではあったがどことなく寂し気な大人しい夜光花のごとくの美貌であった。
…それが今では、きらきらしいまでの光の輝きのベールを纏ったかのような美しい青年に変化していた。
艶めかしく、潤いに溢れた暁の貌を愛し気に見つめ、少し妬心めいた感情にも襲われる。
次いで、暁にくちづけされたあの甘い記憶が蘇る。
…兄さん…好きでした…。
そう震えながら告白してくれた暁…。

自分は男性に性的興奮を覚えたことはない。
ましてや、暁は血を分けた弟だ。
…だが、時々妖しい妄想じみた考えに囚われることがある。
…もし、暁に抱いてほしいと乞われたら…自分は一線を越えていたかも知れないと。
何かの偶然が重なり、そのような状況になったのなら…自分はきっと拒むことなく、彼を抱いたのだろうと…。
口にするのも愚かしい妄想ではあるが、その思いは真実であった。
…それほどに、暁は美しく妖しく淫蕩で、男の湿った性的欲求を刺激する存在なのだと、礼也は気付いたのだ。

目の前にいる氷の美貌を備えた冷静沈着な執事、月城を見る。
…彼も暁に囚われた哀れな…しかしこの上なく幸福な犠牲者なのだと…。

礼也は二人に穏やかに話しかける。
「…二人は…幸せか?」
暁が白い頬を薔薇色に染めて、月城を見上げる。
「…はい。…幸せです」
月城は驚くほどに優しく素朴とも言える飾り気のない微笑みを浮かべ、暁を見つめ返した。
「…幸せです。…この上なく…。こんなに幸せで…良いのだろうかと苦しくなる程に…」
それはそのまま、暁への愛の告白であった。

礼也はやや大仰に眉を上げ、両手を広げてみせた。
「…そうか。…二人が幸せならそれで良い。…良かった…」
美しく潤んだ眼差しをした暁に頷いて見せる。
そして、いつもの朗らかな口調で優しく二人に告げた。
「…月城、私の生まれたての可愛い息子に会いに行ってくれ。…光さんが楽しみに待っている」

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