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夏の華 〜 暁の星と月 Ⅱ 〜
第2章 初戀のひと
「…これは…何とお可愛らしい…!」
月城は珍しく感激したような声を上げた。
彼の腕の中には、白い高価なレースのベビードレスを着て、純白の柔らかなおくるみに包まれぱっちりとその澄んだ瞳を開いている薫がいた。
生まれて数日だが、大分起きている時間が増えたようだ。
その傍らの椅子に座り、柔かに笑っている光は、白いブラウスに葡萄酒色のタフタの長いスカート姿で、そのミルクのように白い肌はしっとりと潤い、まさに母性を感じさせる柔らかな美しいに満ちていた。
「…みんなそう言ってくれるけれど…まだまだお猿さんみたいじゃない?」
相変わらず皮肉屋な光だが、その貌は薫が可愛くて仕方がないといった表情だ。
月城は、薫から目を離さずに微笑みながら答える。
「いいえ。…私も数多くの新生児を拝見していますが、このように顔立ちが整われたお子様は初めてです。…高いお鼻は縣様似ですね。…大きなお目は光様似でいらっしゃる…」
「本当?…それなら嬉しいわ。…あ、そう言えば、泉が良く薫のことを気にかけてくれるのよ。あんまり泣いているとあやしに来てくれるくらい。…乳母より良く気がつくわ」
そう嬉しそうに笑った。
月城は照れ臭そうに唇を歪め、淡々と答える。
「…そうですか…。弟は幼い時から妹の面倒をよく見ていましたので、赤ちゃんの世話は慣れているのでしょう」
…そうか…。月城には妹もいるのだ…。
「泉は子供好きだと言っていたわ。彼は明るくて人懐こくて働き者だし…とても良い青年ね。
子供も生まれて何かと人手がいるから、助かるわ」
光に手放しに褒められ、月城は安堵したように微笑んだ。
…良かった…。
泉くんはどうやらこの屋敷に馴染めそうだ…。
暁はほっとしながらも、月城の薫を見る包み込むような眼差しを見て、心の奥底がちくりと痛む自分を感じた。
…月城も…子供好きなのだろうか…。
薫を見つめる常ならぬ月城の愛しげな眼差しが気にかかる。
…月城は…本当は…子供が欲しいのではないだろうか…。
光と月城の楽しげな談笑を俯瞰で見ながら、暁は不意に言いようのない不安に襲われ、心が沈みゆく自分を感じていた。
月城は珍しく感激したような声を上げた。
彼の腕の中には、白い高価なレースのベビードレスを着て、純白の柔らかなおくるみに包まれぱっちりとその澄んだ瞳を開いている薫がいた。
生まれて数日だが、大分起きている時間が増えたようだ。
その傍らの椅子に座り、柔かに笑っている光は、白いブラウスに葡萄酒色のタフタの長いスカート姿で、そのミルクのように白い肌はしっとりと潤い、まさに母性を感じさせる柔らかな美しいに満ちていた。
「…みんなそう言ってくれるけれど…まだまだお猿さんみたいじゃない?」
相変わらず皮肉屋な光だが、その貌は薫が可愛くて仕方がないといった表情だ。
月城は、薫から目を離さずに微笑みながら答える。
「いいえ。…私も数多くの新生児を拝見していますが、このように顔立ちが整われたお子様は初めてです。…高いお鼻は縣様似ですね。…大きなお目は光様似でいらっしゃる…」
「本当?…それなら嬉しいわ。…あ、そう言えば、泉が良く薫のことを気にかけてくれるのよ。あんまり泣いているとあやしに来てくれるくらい。…乳母より良く気がつくわ」
そう嬉しそうに笑った。
月城は照れ臭そうに唇を歪め、淡々と答える。
「…そうですか…。弟は幼い時から妹の面倒をよく見ていましたので、赤ちゃんの世話は慣れているのでしょう」
…そうか…。月城には妹もいるのだ…。
「泉は子供好きだと言っていたわ。彼は明るくて人懐こくて働き者だし…とても良い青年ね。
子供も生まれて何かと人手がいるから、助かるわ」
光に手放しに褒められ、月城は安堵したように微笑んだ。
…良かった…。
泉くんはどうやらこの屋敷に馴染めそうだ…。
暁はほっとしながらも、月城の薫を見る包み込むような眼差しを見て、心の奥底がちくりと痛む自分を感じた。
…月城も…子供好きなのだろうか…。
薫を見つめる常ならぬ月城の愛しげな眼差しが気にかかる。
…月城は…本当は…子供が欲しいのではないだろうか…。
光と月城の楽しげな談笑を俯瞰で見ながら、暁は不意に言いようのない不安に襲われ、心が沈みゆく自分を感じていた。