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夏の華 〜 暁の星と月 Ⅱ 〜
第2章 初戀のひと
「晩餐を食べて行きなさい」という礼也の勧めを月城は丁重に辞退し、暁と共に家路に着いた。

暁の家に入り、月城は暁の着替えを手伝いジャケットを脱がせる。
そしてそのまま、背中から抱きしめた。
「…どうされたのですか…?…何をお気に病んでおられるのですか?」
薫と対面してからの暁の様子がおかしかった。
明らかに塞ぎ込むような様子で、口数も少なくなり、笑顔にも元気がなくなっていたのだ。
月城はそれを察知していた。

暁は黙ったままだ。
月城は強く、優しく暁を抱きしめる。
「…仰って下さらなければ分かりません。…何か私が暁様の意に染まぬことをいたしましたか?」
暁は黙って首を振る。
答える代わりに、月城の腕にぎゅっとしがみつく。
…こんな時の暁には、何を言っても頑なに口を閉ざすだけだ。
分かっている月城はそのまま無言で暁を抱きしめ続けた。

暫くして、月城の腕の中から漸くか細い声が聞こえた。
「…月城は…子どもが好き…?」
「…子ども…ですか…?」
「…薫くんを…愛おしそうに抱いていた…」
「ああ…。そうですね。…薫様はお可愛らしい赤ちゃんでしたから…」
更に弱々しい声が続く。
「…自分の…子どもは欲しくないのか…?」
月城は眉を顰める。
「…暁様…?」
「…本当は…君は、自分を子どもを欲しいのではないかと…思ったのだ。薫くんを抱いている君は、とても嬉しそうだったから…」
漸く合点がいった月城は、暁を自分の方に向かせようとした。
「こちらをお向きください、暁様」
暁はそれを拒む。
「…僕とずっと一緒にいても、子どもはできない…。君が自分の子どもが欲しいなら…他の人を…女性を選ぶべきだ…」
自分でも驚くほどに憤った声が出る。
「…怒りますよ、暁様。…こちらをお向きください!」
嫌がる暁を力で捩じ伏せ、反転させる。
暁はやはり静かに泣いていた。
「…君が自分の子どもを欲しいなら、正直に言ってくれ…できるだけの協力をするから…」
月城の怒りと苛立ちを抑えながら、暁の貌を両手で包み込み、上向きにさせる。
「…本気で仰っているのですか⁈…私が、他の女性を抱いても構わないのですか⁈」
「…嫌だよ…嫌だけど…君が子どもを欲しいなら仕方ない…。子どもを作っていいから…僕のことを側に置いて欲しいんだ…」
涙を流しながらかき口説く暁を、月城は腹立たしげに見つめる。
「…貴方は馬鹿だ…」

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