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夏の華 〜 暁の星と月 Ⅱ 〜
第2章 初戀のひと
泉は眼を見張る。
「…そうなんですか…」
礼也は魅惑的な眼差しで、笑ってみせる。
「…ああ。だから私の身体には炭鉱夫の血が流れているんだ。…それが時々騒ぎ出すのか、たまに突拍子のないことをしてしまうのさ」
「…お、奥様のことですか?」
礼也は可笑しそうに笑う。
「察しがいいね。…まあ、新聞沙汰にもなったからなあ」
こめかみを掻いて苦笑する姿も洒脱で絵になる。
…礼也は見合いの最中の光を強奪するようにして奪い、見合いをぶち壊し、劇的な結婚をしたのだそうだ。
その様子は華族新聞にも載り、暫くは社交界を賑わせた。
そんな型破りな夫婦だが、社交界ではとても人気が高い。
礼也の自由な伸び伸びとした気性に力づけられたように、泉は、思い切って口を開いた。
「…あ、あの!…お願いがあります!」
礼也は眉を上げる。
「…あの…俺は、駿河台の法律専門学校の夜学に通っているんですが…こちらにお世話になってからも、続けても良いでしょうか?勿論仕事はしっかりやります!週に3回、夜間の時間だけ、自由を頂けましたら…」
…いわくつきの自分を雇ってくれた礼也だ。
駄目だと言われてもそれはそれで諦めが着く。
当たって砕けろのつもりで打ち明けたのだ。
礼也は驚いたように眼を見開いた。
「…へえ…!君は法律家になりたいの?」
「…はい!…あの、無謀なのはわかっているんですが…弁護士になりたいんです」
笑われるかな…とおずおずと口にすると、礼也は瞳を輝かせた。
「素晴らしい!いいじゃないか!少年よ、大志を抱けだ」
「…は、はあ…」
「クラーク博士の言葉だ。…頑張りたまえ。生田には言っておくよ。この図書室の本も、勤務が終わったら自由に読みなさい」
「え⁈い、いいんですか⁉︎」
礼也は頷く。
「本は読まれるためにあるのさ。…私の親友の弁護士を今度、紹介しよう。一流の弁護士だ。貴重な話が聞けるぞ」
夢のようなことばかり言われ、胸が高鳴る。
「あ、ありがとうございます!頑張って働きます!」
礼也は温かく笑った。
「君は薫をとても可愛がってくれる。これからも頼りにしているよ」
そう言って、しなやかに部屋を後にしたのだった。
「…そう…。それは良かったね…。さすがは兄さんだ」
泉の話を聞いた暁が、嬉しそうに眼を細めた。
「…そうなんですか…」
礼也は魅惑的な眼差しで、笑ってみせる。
「…ああ。だから私の身体には炭鉱夫の血が流れているんだ。…それが時々騒ぎ出すのか、たまに突拍子のないことをしてしまうのさ」
「…お、奥様のことですか?」
礼也は可笑しそうに笑う。
「察しがいいね。…まあ、新聞沙汰にもなったからなあ」
こめかみを掻いて苦笑する姿も洒脱で絵になる。
…礼也は見合いの最中の光を強奪するようにして奪い、見合いをぶち壊し、劇的な結婚をしたのだそうだ。
その様子は華族新聞にも載り、暫くは社交界を賑わせた。
そんな型破りな夫婦だが、社交界ではとても人気が高い。
礼也の自由な伸び伸びとした気性に力づけられたように、泉は、思い切って口を開いた。
「…あ、あの!…お願いがあります!」
礼也は眉を上げる。
「…あの…俺は、駿河台の法律専門学校の夜学に通っているんですが…こちらにお世話になってからも、続けても良いでしょうか?勿論仕事はしっかりやります!週に3回、夜間の時間だけ、自由を頂けましたら…」
…いわくつきの自分を雇ってくれた礼也だ。
駄目だと言われてもそれはそれで諦めが着く。
当たって砕けろのつもりで打ち明けたのだ。
礼也は驚いたように眼を見開いた。
「…へえ…!君は法律家になりたいの?」
「…はい!…あの、無謀なのはわかっているんですが…弁護士になりたいんです」
笑われるかな…とおずおずと口にすると、礼也は瞳を輝かせた。
「素晴らしい!いいじゃないか!少年よ、大志を抱けだ」
「…は、はあ…」
「クラーク博士の言葉だ。…頑張りたまえ。生田には言っておくよ。この図書室の本も、勤務が終わったら自由に読みなさい」
「え⁈い、いいんですか⁉︎」
礼也は頷く。
「本は読まれるためにあるのさ。…私の親友の弁護士を今度、紹介しよう。一流の弁護士だ。貴重な話が聞けるぞ」
夢のようなことばかり言われ、胸が高鳴る。
「あ、ありがとうございます!頑張って働きます!」
礼也は温かく笑った。
「君は薫をとても可愛がってくれる。これからも頼りにしているよ」
そう言って、しなやかに部屋を後にしたのだった。
「…そう…。それは良かったね…。さすがは兄さんだ」
泉の話を聞いた暁が、嬉しそうに眼を細めた。