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夏の華 〜 暁の星と月 Ⅱ 〜
第2章 初戀のひと
「仕事との両立は大変かも知れないけれど、泉くんならできるよ。…休みの日はたまには遊びに来て…。一緒に食事でもしようよ」
優しく誘ってくれる暁が眩しく、嬉しい。
…けれど…
「…兄貴が良くは思わないんじゃない?」
少し拗ねたように呟く。
「月城が?どうして?」
暁は不思議そうに尋ねる。
泉は何となく悟っていた。
兄は、自分と暁の二人だけの世界を邪魔されたくないのだ。
例え弟の自分でも…。
兄の独占的で偏愛的で盲目的な暁への愛…。
あの日の暁のうなじに残る歯型でそれが、わかった。
…あれは、俺への牽制球だ。
兄は、例え弟でも暁に近づこうとするものは許さないのだ。
兄はこの屋敷に泉が世話になることが決まった時に挨拶に来てくれたし、陰では自分を気遣い心配してくれているのだが…暁に対しては全く話は別だ。

泉は目の前の稀有な美貌を誇る美しい青年を見つめる。
…まあ、無理もないか…。
暁の美しさは、此の世ならぬ妖しい魅力に満ちたものだ。
一見、大人しやかな儚げな美貌だが、よく見るとその美しさの陰には湿った淫靡な花のような色香が隠れている。
…この妖しい花を独占したいという兄の気持ちは分からなくはない。

…ただ、面白くはないけれど…。

黙ってしまった泉を気遣うように、暁は話題を変えた。
「来週は薫くんのお披露目の夜会だね」
「あ、そうですね…」

来週の5月の休日に縣家では薫のお披露目の夜会を開催することになっている。
もっとも薫本人は最初に少し、乳母に抱かれ顔見せするだけで、後は単なる祝賀の夜会なのだが…。
初孫が生まれ、狂喜乱舞している光の父親、麻宮侯爵の是非、お披露目会を開催するようにとの要望を受け、開かれる夜会だ。

薫の今後の将来の為にと、政界、財界のお歴々始め、様々な名だたる人々を招待しているので、かなりの盛大な夜会になると、生田は珍しくやや緊張しているようだった。

「君がうちに来てから初めての盛大な夜会だね。…もちろん北白川伯爵令嬢方もご招待しているから、月城にも会えるよ」
嬉しげに話す暁の貌は輝いている。
それを横目で見ながら、つまらなそうに呟く。
「…兄貴に会えて嬉しいのは、暁様でしょう」
暁はぱっと目を見開き、恥ずかしそうに頬を染め俯いてしまった。

…そんな暁を泉は、とても可愛いな…と、思う。
…が、一方で、そんな自分を腹立たしく思うのだった。
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