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ジャンクフードでできている
第11章 試験管
歩いてみた
ある町外れの総合公園の周回コース
そこには楓やイチョウが植えられていて
十月も後半ともなれば、色付いて秋を感じさせてくれる
人気の少ない外周コースに、午前中の雨によって水溜まりができている
空を映して、バステルで描いたような雲がのぞいている
そこに銀杏が落ちていた
ぎんなん
黄色い粒がいくつも落ちていた
ぎんなん
茶碗蒸しに入っている
煎るとおいしい
ぎんなん
亜鉛が含まれている
亜鉛は味覚障害や勃起不全に効くのだ
勃起不全じゃない人が飲めば勃起全快になるのだ
僕がじっとぎんなんを眺めていると
ダックスフンドを連れたセミロングで素敵な女性が向かいから歩いてきた
もしかしたら
彼女は僕がぎんなんに夢中であるのに気付いて
まあ、彼は亜鉛を欲しているのね
きっと欲求不満なんだわ、なんてエロいのかしら
なんて思うかもしれない
僕がそんなやましくてゲスな妄想を弄んでいると
彼女は爽やかに会釈をしてくれた
白い歯や薄いピンクの唇がチャーミングだった
僕があまりに真っ当で、真っ白な生物に出会って
少したじろいでいると
彼女の連れたダックスフンドが僕を鼻で笑った
彼女と犬が通りすぎていくのを見て
僕は心底、犬がうらやましくなった
首輪をつけてもらって散歩しているあの犬畜生を
妬ましく思った
きっとあの畜生めは清純なご主人様のお供をして
そこいらで片足をあげ、好き勝手に小便や大便をし
家に帰ればマテやオスワリをして
おやつを食べさせてもらってヨシヨシと頭を撫でてもらえるのだ
ひょっとすれば、家の中でおむつをしてもらうかもしれない
または、彼女の顔や口をペロペロなめたりするかもしれない
実はあいつは舐め犬で、彼女のアソコをひたすらなめていて、彼女はアンアンと声をあげて感じているのかもしれない
ああ、畜生め、なんてうらやましい
と、まあ酷く妄想が飛躍して、クズに堕ちた自分を客観的になぶり、自己嫌悪に陥る
どうしようもなく腐っているなと
腐ったぎんなんはウンチのような臭いを発している
まるで僕みたい
どこかの運動部の列がうつむいた僕を走って追い越していく
もう忘れるくらい昔には、僕も走ったりして何かのどこかを目指していたのだ
なんとか前を向けば道はまだ続いている
しかたなく、また歩き出す
冬までまだ少し、ある
「うすっぺらい人となり」
ある町外れの総合公園の周回コース
そこには楓やイチョウが植えられていて
十月も後半ともなれば、色付いて秋を感じさせてくれる
人気の少ない外周コースに、午前中の雨によって水溜まりができている
空を映して、バステルで描いたような雲がのぞいている
そこに銀杏が落ちていた
ぎんなん
黄色い粒がいくつも落ちていた
ぎんなん
茶碗蒸しに入っている
煎るとおいしい
ぎんなん
亜鉛が含まれている
亜鉛は味覚障害や勃起不全に効くのだ
勃起不全じゃない人が飲めば勃起全快になるのだ
僕がじっとぎんなんを眺めていると
ダックスフンドを連れたセミロングで素敵な女性が向かいから歩いてきた
もしかしたら
彼女は僕がぎんなんに夢中であるのに気付いて
まあ、彼は亜鉛を欲しているのね
きっと欲求不満なんだわ、なんてエロいのかしら
なんて思うかもしれない
僕がそんなやましくてゲスな妄想を弄んでいると
彼女は爽やかに会釈をしてくれた
白い歯や薄いピンクの唇がチャーミングだった
僕があまりに真っ当で、真っ白な生物に出会って
少したじろいでいると
彼女の連れたダックスフンドが僕を鼻で笑った
彼女と犬が通りすぎていくのを見て
僕は心底、犬がうらやましくなった
首輪をつけてもらって散歩しているあの犬畜生を
妬ましく思った
きっとあの畜生めは清純なご主人様のお供をして
そこいらで片足をあげ、好き勝手に小便や大便をし
家に帰ればマテやオスワリをして
おやつを食べさせてもらってヨシヨシと頭を撫でてもらえるのだ
ひょっとすれば、家の中でおむつをしてもらうかもしれない
または、彼女の顔や口をペロペロなめたりするかもしれない
実はあいつは舐め犬で、彼女のアソコをひたすらなめていて、彼女はアンアンと声をあげて感じているのかもしれない
ああ、畜生め、なんてうらやましい
と、まあ酷く妄想が飛躍して、クズに堕ちた自分を客観的になぶり、自己嫌悪に陥る
どうしようもなく腐っているなと
腐ったぎんなんはウンチのような臭いを発している
まるで僕みたい
どこかの運動部の列がうつむいた僕を走って追い越していく
もう忘れるくらい昔には、僕も走ったりして何かのどこかを目指していたのだ
なんとか前を向けば道はまだ続いている
しかたなく、また歩き出す
冬までまだ少し、ある
「うすっぺらい人となり」