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ジャンクフードでできている
第19章 クコ
ある程度、年を老うと
生活の大部分が
自動化してくる

食事、排泄、仕事、テレビとかなど

ほかそれあれどれ

昨日のことだか、今日のことだか、さっきのことだか

もうわからない

時間の流れが速すぎて、途方もない勢いで失われていく

でも、たぶん、それらはどうでもいいことなんだ

ところで

ぼくは

君のことだけは

必死で留めておこうとしているんだけど

(それはぼく自身の存在のためでもある)

それでもややもすれば、失われている

このとき、そのとき

君の表情と、言葉と、ぬくもりを

その一瞬を

ぐっと、神経に全力をこめて

脳の引き出しに丁寧に畳んでしまうのだけれど

いつのまにか、本当にいつのまにか

失われている

そのことに気付いたとき

ぼくはいつも絶望する

あれほど、狂ってしまいそうなほどに

愛していた、欲していた

君の

名前や顔が

薄れていってしまうことに

絶望する

本当に、あの時間軸の延長線に

ぼくは存在しているのか

ぼくの

ぼくの記憶は

君を愛したぼくは

君は

君はいったい

誰だったんだ

ああ、もう、わからない

ぼくには、もう、わからない

この世界が間違っているのか、正しいのか

それともぼくが間違っているのか、正しいのか


ふと、目を覚ます

うたた寝のこたつ

涙が乾いた跡がある

もう、かえらないのだ

あの熱かった日々

とても、良くて、哀しい夢をみた午後


「風邪はひくまい」


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