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溺れる金魚
第20章 ほどける心
「大丈夫、もう五年経つんじゃないかな。この前転移もしてないから大丈夫って電話があったし。会長が、社長を辞めると言い出した頃だよ」
……そうだ。
父はなぜか突然取り付かれたかのように引退を騒ぎ出した。
まだ定年には遠い年齢だったにも関わらず。
「お義母さんね、みんなに黙って一人で手術受けたんだって」
「……」
「みんなに心配掛けたくなかったのもあったんだろうけど、会長に弱味を見せたくなかったのが一番の理由だって笑ってたよ。君ら姉妹に言ったら会長を責めて結局ばれると思ったって」
思い出したように佐野がクスクスと笑う。
「その、車で送っていったときに色々と聞いてね。本当にすごいよ、君のお母さん。あれじゃ、会長も惚れ直すだろうね」
佐野の話しはこうだった。
……そうだ。
父はなぜか突然取り付かれたかのように引退を騒ぎ出した。
まだ定年には遠い年齢だったにも関わらず。
「お義母さんね、みんなに黙って一人で手術受けたんだって」
「……」
「みんなに心配掛けたくなかったのもあったんだろうけど、会長に弱味を見せたくなかったのが一番の理由だって笑ってたよ。君ら姉妹に言ったら会長を責めて結局ばれると思ったって」
思い出したように佐野がクスクスと笑う。
「その、車で送っていったときに色々と聞いてね。本当にすごいよ、君のお母さん。あれじゃ、会長も惚れ直すだろうね」
佐野の話しはこうだった。