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溺れる金魚
第24章  極甘な夜
普段帰りの遅い彼が、ほぼ定時に仕事を終えられたのは余程無理をしたのだろうと紗良にも伝わった。


「店、もう予約してあるから、行こう」

彼女の背中に手を添えて出口を促す。


カフェを出ると、当たり前のように彼の方から紗良の手を求めてきた。

その事がとても幸せだった。



「お店って、どこですか?」

振り返りながらにやりと笑む佐野に、紗良は首を傾げた。


「初めて二人でデートしたとこ」

初めてのデート……。



あれは、まだ短大の一年生の時だった。

彼との婚約の話を父から提案されて有頂天になった。


彼も自分と同じ気持ちなのだと、そう思って出掛けたデート。




しかし、それは散々なものだった。
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