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第25章 　嫉妬と溺愛

「奥様、後は私と社長とで……」

一通り回った後も、絶え間なく続く閑談。


紗良の表情に疲れが見えたのを気を利かせて佐野が指示を出したものだった。



「でも……」

「紗良は、久し振りにお義母さんとでもゆっくり話しておいで」


突け離されたような孤独感が一瞬走る。

それを表面には出さずに、紗良は従った。


多分、仕事の話に聞かれたくないこともあるのかもしれない。



母を探したが、父の隣に仲睦まじく並ぶ姿を見て邪魔はすまいと、一人窓辺で立っていた。


周りの様子を見ながら思う。



秘書の大人の美しさに、紗良は嫉妬をしていた。

自分のドレスの何と幼いことか。



佐野が自分を想って選んでくれたとはいえ、それを紗良は心のどこかで恥じていた。