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溺れる金魚
第25章  嫉妬と溺愛
「私、佐野紗良です。漢字でも四文字ですが平仮名でも四文字なんですよ?」


その自己紹介に彼女が目を瞠目したかと思うと口元に当てながらくすりと笑う。

「もしかして、こちらの社長さんの奥様?」



佐野の名前は経済紙などでも度々出るようになってきたから知っているのは分かる。


でも、自分の名前まで……。

紗良は不思議そうに「ええ、そうです」とだけ答えた。



「そう、あなたが……」

にこやかに、だけどその笑みにはどこか意味ありげな感じが混じっている。


紗良の心中を彼女は悟ったように言葉を続けた。


「ごめんなさいね。でも、そう……あなたなのね」



先程の辛そうな表情はどこへ行ったのか、彼女が何かを思い出したように楽しげに笑い、紗良は置いていかれたように一人戸惑っていた。
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