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溺れる金魚
第25章  嫉妬と溺愛
紗良を見詰める目は諭すように優しい。

「役に立たたないなんて、そんな……君は傍に居てくれるだけで俺は嬉しいよ。それに、青波が感謝していたよ。奥さん身重だから、椅子は助かったって」



彼女の話題になって不意に思い出す。

佐野の溺愛ぶりについて。



それだけで紗良の口元は緩み、心がほんわかと暖かくなる。


そして、一つ思い出したように笑みが漏れた。


「……今度は何?」

佐野が拗ねるように紗良を見る。


「……いいえ、何でも……」

と、答える顔がダメ……にやけてしまう。



「だから、何?って」


佐野の目が段々と疑惑を持ち始める。
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