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溺れる金魚
第5章  熱いキスを
その唇の感触に酔いながら紗良の中に疑問が浮かぶ。




彼は今、相手が私と理解しているのだろうか。

今まで、こんな優しい彼を知らない。



これは、浮気相手と勘違いしているのかもしれない。

探るように紗良が問う。


期待しないために自分に対してのキスではないと言い聞かせても、声がどうしても甘くなってしまう。




「私の……名前、呼んで……」

「紗良?……これは夢?君がそんなこと、ねだるなんて……」




自分の方からキスをしたなどと彼に知られたくはない。

それでつい、小さな嘘をついた。


「そ、そうです。これはあなたの夢の中……」

そう言った途端に、どこにそんな力が残っていたのだろう。



上になったままの紗良の頭と背中に回された彼の腕に今まで以上に力が入った。



微塵にも動けず、紗良は彼の舌をされるがまま受け入れるしかなかった。

熱い舌がその存在をひけらかすように暴れまわる。
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