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溺れる金魚
第5章  熱いキスを
キスの気持ち良さに、いやらしく求める言葉だけが紗良の頭を満たしていく。



こんなに激しいキスを、私の知らない誰かにもしているのか……そう思うと悔しさが湧き出た。

その人にだけ……なんて、狡いと思ってしまう。



出来ることなら毎晩だって、この熱いキスを欲しい。


彼にすがり付きながら更にキスを求める。


「……ああ、紗良。……してる」

「え?」


口の中に消えてしまった言葉を今すぐ吐き出して再生したい。



彼は今……何と言ったのか?

紗良の口内に消えてしまった言葉。



それと共に、彼の意識も完全に落ちてしまった。

愛してる……と、言ったような気がした。


何て、都合の良い耳。

そんなはず……あるはずも無いのに。



紗良は小さく自嘲した。


紗良……と自分の名ばかりを呼んでいた佐野に紗良はもう一つだけキスをした。



一方通行のキス。


彼はただ、夢の中をさ迷っているだけ。

自身に言い聞かせても、今味わったばかりの熱いキスを忘れることなんて出来なかった。




キスの次の行為に更なる期待だけが膨らんでいった。
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