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溺れる金魚
第7章  友と
「佐野さんが来るまで一緒に居ようか?」

沙保里が心配そうに覗き込む。


「ううん、大丈夫。みんなと二次会楽しんできて。あまり飲みすぎちゃ、だめよ?」


店を出て、じゃあと別れる。

それから程無くして向こうからやって来る彼の車を見つけた。




会社から帰ってきたにしては随分と早い到着ではあったが、紗良は深く考えずに礼を言って車に乗り込んだ。

わざわざ仕事を終えてから迎えに来たというのに、会話も無く車中は重苦しい空気。



隣に座る夫の横顔を盗み見ても、こちらの方など一切興味も無いのだろう。

目が合うこともなくずっと真正面ばかりを見ている姿に小さなため息が漏れた。




「疲れたなら着いたら起こすから寝ていて良いぞ」

多分彼もこの沈黙が嫌なのだろう。



紗良はその言葉に従い窓ガラスに頭をもたれて目を瞑った。



別に疲れたわけでも眠いわけでもない。

ただ、起きて沈黙を通すのが辛かった。
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