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溺れる金魚
第7章  友と
昔も一度だけ彼に横抱きに運ばれたことがあった。

自分を軽々と持ち上げる彼。



見上げるとすぐそこに彼の顔があり、紗良はずっと俯いてばかりいたのを覚えている。

思い出すだけで身体が熱くなる。


あの時は確か、足首を捻って……。

そうだ。



つまづいた拍子に彼に抱きついてしまって、慌てて離れようとしたのに運悪くそこに段差があって……。


あの時初めて彼を男と意識したのかもしれない。





リビングから漏れる明かりに気付いて身を起こした。

吸い寄せられるように近付いていき、ドアの隙間をそっと覗く。




彼はまだ起きており、ノートパソコンを開いて真剣な面持ちで、時にクスリと笑みを溢しながら何か作業ををしている。



仕事?


それとも自分の知らない恋人とのメールのやり取りかも……。





……確かめたい。
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