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美肉の狩人
第1章 絶望の中で見つけた獲物 香織
 転んだ子どもに駆け寄り、しゃがんで抱き起し、優しく笑う母親。その短いスカートからこぼれる白い内腿。
 四つん這いになって、砂場でトンネルを掘る母親のシャツの胸元からのぞく豊かな胸と乳首。幸せな母親たちの無防備な姿を見るともなく眺めながら俺は呟いた。
 「俺だけじゃないんだぞ。お前らが疑いなく信じている、そのしあわせだって、簡単に消えて無くなってしまうものなんだ。」
そう呟きながら俺は、こいつらのしあわせを踏みにじってやりたいと思った。からだの奥底から「残忍さ」や「身勝手さ」、そして「性欲」や「破壊」、そんなどす黒い衝動がわき上がってくるのを感じていた。
 とりあえず、なんだっていい。許されないことだっていい。いま生きていることが実感できるのなら、犯罪だって構わない。いや、いっそ、犯罪のほうがいい。失くすものがない俺には、ちょうどいい。あと半年、やりたいことをやって、他人のしあわせを踏みにじって死んでいくのも悪くない。途中で捕まったって、いまさら命が削られるわけでもない。
 妻の不倫に、余命宣告、仕事だって、先が見えちまった。どうせ、人を呪わずにはいられないんだ。いまの、この絶望感を組み伏せて、あと数ヵ月、好きなように暮らしたい。そのためになら、なんだってする。地獄に落ちたって構わない。
 俺は、公園で遊ぶ母親と子どもたちを眺めた。きっと普通なら、微笑ましい光景に見えるんだろう。でも、俺には違って見えてしまう。不倫統計からみたって、たぶん間違いなく、ここにいる母親たちの幾人かは浮気しているはずだ。
 子どもが疲れて眠ってしまったら、旦那以外の男に跨って、腰を振っているんだ。そう、恵美子みたいに・・・。
 俺には、女たちの痴態が見えるような気がした。子どもに向けられる無邪気な笑顔は、旦那以外の男に媚びて笑うだろう。子どものほっぺにキスした唇は、男のものをしゃぶるんだろう。そして昼間、別の男に抱かれたからだは、夜は、また、旦那に抱かれている。
 どうせ、誰かを裏切って得る快楽だ。だったら、その男が俺だって構いはしない。そう、俺だって・・・。半年もたてば死んじまう、あとくされのない男と遊んだほうが。こいつらにだって、好都合だろう。
 そうだ。「まず、ここで目をつけた女を犯してみようか」、俺は、そう心に決めた。
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