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住み込みメイドのエッチなお仕事。
第12章 温泉旅行②
「…ん…」

目が覚めて、ぼんやりとした視界の中、一瞬ここがどこかわからなかった。

あぁ…そうだ、温泉に来たんだっけ…

頭の下には逞しい腕、腰にも腕の重みがあって、背後から抱きしめられて寝ていたのだと気づく。

優しい人……

昨日1日手を繋ぎ歩いてくれた。夜は…激しく涼子を抱いた人。

純粋な人……

屋敷の主の仕事を涼子は知らない。けれど、少なくともとてもお金持ちで、昭彦はその家の御曹司だ。

欲しいものを欲しいと言える環境。そしてそれを得るだけの器量がある。だからこそ純粋で、とても優しい。他の男の影を消してやるなんて、キザなセリフをサラリと吐いて、それが涼子の心にどんな影響を与えるかなんて、きっと気づいていないのだろう。

逞しい腕にそっと手を這わせ、唇を寄せて静かにキスをする。

思い起こせば、正式にメイドになった涼子をはじめて抱いたのは昭彦だった。その後も何かと涼子を気にかけて、2週間前のあの日も、倒れている涼子を見つけ部屋に運んでくれたのは昭彦だった。

好きになっちゃ…ダメなのにな

櫻井に振られたのにそれほど長く落ちこまなかったのは、みんなの優しさがあったからだ。それでも残る小さな染みさえ、強く抱き締めてくれるこの腕が、根こそぎ掻っ攫っていく。

叶わない恋なのにな…

櫻井以上に困難な恋だと思う。昭彦が涼子を抱くのは、涼子がメイドだからだ。メイドを辞めたら接点なんて見つけられない。メイドにならなければ、この人に抱かれることなどなかっただろう。

嬉しかったなぁ……

俺だけ感じてろ、なんて、独占欲を見せられて、嬉しくならない女性なんていないだろう。

好きになっちゃ、ダメだよ涼子……

戒めのように自分に言い聞かせる。
もはや手遅れな心は、今だけは、と言い募る。

今だけ……

すり、と頰を腕に擦り付ける。
背後から聞こえる昭彦の静かな呼吸。起こさないようにそっと腰に回された腕を外して布団から抜け出して、涼子は浴室へと足を向けた。



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