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第14章 心のベクトル

律子と敦美を伴った貴俊を乗せた車を見送って、清孝は隣に立っているサラの頭を胸へと抱き寄せた。

「っ、ぅ…」
「よく頑張った。よく我慢したな」

バタバタと動く貴俊の部下に混ざり、得意の英語を活かし手配に連絡にとサラは奔走していた。涙も流さず唇を噛み締めて、険しい顔で働いていたのだった。

清孝はゆっくりと、嗚咽を漏らしながら泣くサラの頭を撫でる。

「明日からは、お前も俺と一緒に出社してくれないか」
「……え？」
「日本とはいえ外人は山のようにいる。忙しくなるからな。俺を助けて欲しいんだ」

涙に濡れた瞳で見上げてくるサラに、清孝は静かに微笑む。

「昭彦を信じろ。あいつは涼子を手放しはしない。俺たちは俺たちでキッチリ礼は返すぞ」
「はい」

強く頷いたサラの額に清孝は唇を落とした。