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住み込みメイドのエッチなお仕事。
第14章 心のベクトル
涼子が目を覚ました時、そこは見知らぬ場所だった。

「目が覚めたか?」

昭彦の声に顔を向けようとして、身体に走った痛みに涼子は呻いた。痛みに誘発され記憶が蘇る。ガタガタと身体を震わせ涙を流し始めた涼子に、昭彦は静かに話しかける。

「我慢しなくていい。好きだけ泣いていいよ。ずっと側にいるから」

昭彦はそれだけを言って、泣き続ける涼子の身体を布団の上からぽんぽんと優しく叩いた。



泣き疲れて再び眠りに落ちた涼子は、魘されながら時折手を伸ばす。

「いや……助け……昭彦さま……」

その度に昭彦は涼子の手を握り、大丈夫、側にいると囁く。

目を覚まし、身体の痛みを感じ、泣き、そして眠りに落ちる。昭彦何も語らず涼子の側にいる。食事も喉を通らない涼子に櫻井は野菜ジュースやスープを用意していた。

やがて身体の傷が癒える。それでも昭彦も櫻井も何も言わず、涼子に触れることもせず、ただ黙って涼子の側にいた。

涼子が感じた恐怖、負った傷の大きさは、昭彦にはわからない。けれど、今、涼子の心が望むことが何かを見極めるように、昭彦は注意深く涼子を見つめる。

幾日が過ぎたのか、徐々に涼子が普通に食事が取れるようになった頃、昭彦は涼子を散歩に誘った。

外に出るの…久しぶり

陽の光が木々の葉に反射してキラキラと光るのを見て、涼子は目を細めた。白樺が混じる木々の間を歩いている途中、隣を歩く昭彦が言った。

「手を繋ぎたい」
「え?」
「手、お前の手、握りたい」

そう言って涼子に手を差し出す。強引に手を取られるわけでもなく、じっと手を差し出して涼子の動きを待っている。

「嫌なら、嫌って言って?」
「嫌じゃ…ないです」

嫌なわけない。

ただ、手を取られる事はあっても、自分から手を引いたことがなかった涼子は、どうしたら良いのかわからない。

単純なことだ。自分の手を昭彦の手に重ねればいい。それだけなのに。

「俺の手を、握ってくれる?」
「……」

促され、昭彦の差し出された手に、涼子は恐る恐る手を伸ばす。

「握って欲しい」

重なった手を緩く握りしめると、昭彦は嬉しそうに笑って涼子の手を優しく握りしめた。
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