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住み込みメイドのエッチなお仕事。
第14章 心のベクトル
「ところが、男性A2も女性Bに好きだと告白する。この場合は男性A2から女性Bに心のベクトルは向いているけれど、女性Bは向いていないよな?」
「…そう、ですね」
「でだ。ここで行動が生まれる」

男性A1と女性Bの間、二本の矢印の上に☆マーク。

「男性A1は手を繋ぎたい、と女性Bに言う。女性Bは男性A1が好きだからYESと答えて手を繋ぐ」
「…」

意図に気づいたのだろう、紙面を見ていた涼子が顔を上げる。その反応に気づかないふりで、昭彦は続ける。

「男性A2も女性Bに手を繋ぎたいと言う。でも女性Bは男性A2は好きじゃないからNOと答える。手は繋げない」
「…」
「この場合、女性Bの感情が手を繋げるか繋げないかを決めている。好きか、嫌いか。YESかNOか」

そうだろ?

涼子は戸惑いを見せる。昭彦は小さく笑うと、違う紙を取り出し、同じように〇を3つ書いた。

「感情の他に、当事者同士の事情が影響する場合もある。男性A1、女性Bにはお互いに対する感情は一切ないが、男性A1は女性Bの雇用主で、主と使用人という関係があるとする。男性A1は女性Bに手を繋げと命令したら、女性Bは従うほかない。手を繋げるんだ」
「…昭彦様…」

震える声で名前を呼ぶ。

「男性A2は客で、女性Bはおもてなしをしなければならない。男性A2が手を繋げとオーダーしたら、女性Bは要望を叶えなければならない。手を繋ぐんだ」
「……」
「手を繋ぐ、という行動は、その動作だけをみると手と手を重ねることだ。動作自体は意味を持っていない。動作に意味を持たせているのは、当事者たちの感情と置かれた状況だ」
「でも」

昭彦は顔を上げると、反論しようとした涼子に問いかけた。



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